全体ホンワカ、でも時に鋭くビシバシと
★★★★☆
初めて読んだ森さんの本は、「明治・大正を食べ歩く」(PHP新書)でしたが、巷によくあるグルメ本とは一線を画し、お店の紹介だけにとどまらずそこにご自身の人生や思い出を投影した味わい深い文章で、読了後にとてもホンワカと暖かい気分に包まれたことを覚えています。
さてこの作者がエッセーを書いたらどんなだろうと興味深く読んでみたのでが本作でしたが、そこには意外に力強い個性と、3人の元気なお子さん達を抱えた生活のリアリティがありました。
エッセーの題材は、普段の生活の出来事を中心に多岐に渡っていますが、やはりホンワカと暖かいムードの中に、時折キラリと森さんの強いメッセージがこめられています。例えば印象深かったのは、昭和30年代の高度成長期に対する捉え方。「あの時代が、自分の手でモノを作らず、自分の足で歩かず、安易に機械や乗り物に頼り、モノを大切にしないですぐに捨てる習慣の始まりだったとすれば、輝いた時代とも言い切れない」とはなかなか手厳しいご意見ですが、考えてみれば森さんの言われる通り!と私も共感します。
また、はやりのバリアフリーについて語ってみれば、「大切なことは施設の形式的なバリアフリー化などではなく、人間同士の”心の隔たりのなさ”だろう。日本のように、人が抱いている赤ん坊をあやすことさえ怪しまれるような国で、はたしてバリアフリーにどれだけの意味があるのか」と、これまた手厳しい。でも、いかにも本質をついています。
まだ本作を読まれていない方は、タイトルや表紙イラストの雰囲気と、そんな森さんの熱いメッセージの間にかなりギャップをお感じになることでしょうが、まさにそれが本作を単なるほのぼのエッセーに終わらせない魅力的な持ち味になっています。
ところで、どうも森さんはご自宅での晩酌が大層お好きなようで(そんな一面も意外)、一度よもやま話を肴にお相伴にあずかりたいものです。
いさぎよさが心地いい。
★★★★★
森まゆみの本を読むのはこれが最初です。愛想も素っ気も感じさせない文体に、さばさばしたものの考え方、なんだか林芙美子を彷彿とさせる。。。と思ったら、彼女は林芙美子の本もだしているのですね。。。 地に足のついた大人の女性とはこんなにいさぎよいものなんだなぁ、と思いました。これを読み、「寺暮らし」という本もあるということを知り、今日オーダーをいれたところです。
森さんらしい内容
★★★★☆
相変わらずきっちりとした文章の森さん。
今まで行かれた海外・日本旅行に関してから日常的なことまで。
簡単なレシピもあったりと読み応えのある1冊です。