ユニークな視点から考察する歴史
★★★★☆
これまでにも様々な分野から歴史を考察する本は数多く存在した。
しかし、食べ物から歴史を考察する本は少ないのではないだろうか。
本書では、明治時代の歴史的な交渉の場においてふるまわれた料理について書かれている。
歴史の転機となる出来事の裏には、少なからず食べ物の影響があると筆者が考えている。
それは、豪華な食事で相手をもてなすことで自分の力を誇示し、交渉を有利に進めることができるからである。
当時の食背景を詳細かつ簡潔にまとめてあり、明治という時代の新たな一面を知ることができる1冊。
日本近代史と饗応
★★★★☆
日本の近代史のさまざまなシーンから、「食」について切り取ってきたもの。
ペリーが日本料理で饗応されて「肉はないのか」と不満を漏らした話、大津事件のあとにロシア皇太子と明治天皇が軍艦上で食べたもの、伊藤博文のフグ好き、『食道楽』の村井弦斎が日露戦争のロシア人捕虜と食べた料理など、どれも面白い。
いずれの章も歴史的な事件や政治状況とからめて語られるのだが、調査がしっかりされており、時代背景などもじっくりと語ってくれるのが興味深い。食だけの本ではないのである。
一方で、歴史的な記述には軽率な点が目立ち、また思い込みだけで書いているような箇所も少なくない。もう少し頑張ってくれると良かったのだが。
前著『「食道楽」の人 村井弦斎』から派生して書かれたもの。そちらと合わせて読むと良いだろう。
食が決めてきた政治
★★★★★
ブリア・サヴァランは、人の食からその心がわかると言った。食は血となり肉となるだけでなく、心になる。断言している識者はいないが、私はそう思っている。
この書には、食が政治を動かした事実が多く語られているが、これは食による心の支配と見ることができる。