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砂のクロニクル〈上〉 (新潮文庫)

価格: ¥1
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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作者の最高傑作でしょう ★★★★★
作者の『虹の谷の五月』より断然面白い。

作者の小説は面白いんだけど、何度も読み返すものは少ない。
ただし、本書は別。

シーア派、クルド、ゾロアスター・・・。
イランに興味がある方にもおすすめ。

自暴自棄・ニヒルになりかけているサラリーマンの
みなさま、この本で男のロマンと知られざる世界で半身浴して
明日も会社に行きましょう。
盛り上がるままに、下巻へ ★★★★☆
クルド関連の本を読んでまして、
日本のベストセラーも読まなければ、ということで。

思いのほか、ハードボイルドで、
そういう部分がちょっと苦手だったりしました。

作者は、
緻密な取材によって小説を書いており、
さながらルポタージュを読んでいるかのよう。
それは、
風景であり、
社会背景であり、
歴史であり、
人物描写が、リアルだから、なのである。
どこまでが実話?
と、ついそう思ってしまう。

イランにおけるクルド人のゲリラを軸に、
日本人武器商人、
イラン国内の革命派、
そして、その人たちとつながる、
ロシア、イギリス、イラク………多様な人々。
それぞれの事情を抱えながら、
幻のクルド人の王国があったという、
マハバードへと人々は集まっていく。

西暦、
ペルシア歴、
イスラム暦、
それぞれが信じる時間の流れもまた違っている。
絶妙な人物描写と、
交錯する思惑と人間たち。
盛り上がるままに、下巻へ続く。
歴史背景を知っていれば、もっと楽しめたのかも知れない ★★★☆☆
映画、もしくは映画を意識した劇画調のオープニングである。
だが、少し判りにくかった。少し経ってから、やっと作者が意図
していた事が理解できた。文字だけが全ての小説という媒体では
オープニングをもっと工夫すべきである。

中東の少数民族クルドが武装蜂起をもくろみ、必要な武器の調達
を日本人の武器商人”ハジ”に依頼する。章ごとに敵味方様々な
人物の視点により物語は進行する。重奏的な構成である。

この構成は、多数の人物が登場する群像小説でストーリーが輻輳
する事がないという利点があるのだろう。しかし逆に、ストーリー
の進行が遅いという欠点もある。読んでいて少しイラついた。

クルドという民族の歴史や中東情勢、イスラム教などに馴染みが
ないため今一つ感情移入出来なかった。歴史背景を知っていれば
もっと楽しめたのかも知れない。
中東に平和は訪れるのか ★★★★★
船戸与一の作品を初めて読んだ。一世代前の冒険小説の最高傑作といえる出来栄えだと思う。主人公達の視点が各章ごとに入れ替わり、イスラム革命後のイランの情勢を様々な立場から描写していく。主人公達は宗教・民族・金儲け等の己の目的に殉ずるために激情に駆られ、怜悧に判断し、苦悩しながら闘いの中で命を削っていく。 国際紛争の主な火種は国家×宗教×民族の数だけある。例えば中東のような複雑な場所では人間の数だけ紛争の火種があるといっても過言ではないだろう。 この作品はフィクションであり、全くの現実ではないと思うが、中東の平和は単純な善悪論では解決しないことが改めて良くわかった。住んでいる人たちだけではなく欧米や旧ソ連諸国の思惑まで絡んでくるのだから、一体どうすれば良いのだ? ただ主人公達は、命をかけた目的を持っている。生きている間に哀しみは絶えず、非業の最期に倒れても、精一杯生きた事だけは誇りに思っているだろう。 近年のノワールとよばれる作品の主人公達は自分の中のどす黒い欲望だけに忠実だ。物質面では豊かでも、むしろそれゆえに凄惨な生き様だ。人間が存在する限り、血を流すのは避けられないことなのか。 もちろんこの小説はエンタテインメントだ。今まで書いてきたようなことを一切抜きにして熱い想いのぶつかり合いに心動かされるのも悪くない。真性正統派冒険小説である。ちょっと厚いけど。
卓越した世界観 ★★★★★
この本でクルド人という民族を知り、中東情勢に興味を持つようになった。同じ地球上とは思えないような、過酷な世界の中で生きる事を宿命付けられた民族のドラマ。その中で彷徨する巡礼者という意味の名前を持つ二人の日本人。熱く、激しいドラマはやがて破滅的な終焉をむかえる。しかし人間たちのドラマも、彼らが信じる神々も、所詮は巨大な大地が創られた歴史の中ではほんの点でしかない。やがては全ては砂の中に埋もれていく。日本人離れした世界観の傑作。果たして船戸与一はこれを超える作品を書けるのだろうか?期待はしているが、難しいだろうなあ・・・