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虹の谷の五月(下) (集英社文庫)

価格: ¥800
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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繊細な情緒と迫力の戦闘シーンで読ませる、少年の成長物語 ★★★★★
フィリピン・セブ島で、闘鶏を生業とする祖父と暮らすトシオ。13歳から15歳の五月の出来事を描く。

フィリピンに特に興味はないし、歴史もほとんど知らないけれど、とても楽しく読めた。そして「人民軍」「マルコス」「アキノ」などについてもっと知りたい気持ちになる。それだけ、物語の魅力が強烈だということだろう。

クイーンのホセに対するアンビヴァレンスな想い。戦い続けるホセの強靭な信念。周囲に惑わされることなく、正しさを理解しているトシオとメグの清廉さ。ラストのじっちゃんの行動。
人々の真摯な気持ちは、読み手の心を強く揺さぶる。トニアやラモンの弱さでさえも。

また、暗殺者や誘拐犯に立ち向かうホセの戦いぶりは見事で、情緒的なものだけでなく、手に汗握る戦闘シーンでも読ませる。かっこよすぎるよ、ホセ!

唯一ひっかかるのが、トシオと彼をとりまく「主人公側」の人々が、あまりに善人すぎるところ。「フランダースの犬」の主人公に対するのと同じイライラを感じてしまう。逆にそれ以外の人々は下劣で野卑な人間ばかり。「善」と「悪」とに二極していて、その構図はちょっと時代劇っぽい。

まあ、そんなこと、壮大な物語を前に、たいしたことじゃ全然ないんだけど。

下種のかんぐりで、その後のメグがどうなるのかが、気になる!
冒険小説としては、良いんですが・・・ ★★★★☆
現代フィリピンのセブ島を舞台にした、読み応えのある冒険小説である、こういう作品がよく売れているのはまことに喜ばしい、と書こうかなと思った。ところが、そうは簡単に喜べないことに気づいた。文庫本に加えられた解説を読むと、解説者が完全に勘違いしているからだ。

解説の小田光雄は次のように書いている。この作品は、「高度資本主義社会と辺境との出会い」を描いたもので、主人公のトシオ少年が生まれ育つ村は、「家族数42のアジア的農村は手工業と農業を中心に営まれ、ほとんど商品経済は導入されていない」、と。しかし、フィリピンはパプア・ニューギニアの奥地ではないんだよ。まして、この小説の舞台となるセブ島は、「辺境」どころか、資本主義の論理が行き渡ったところ。自給自足の生活の村があるなんて、ちょっとありえない設定だ。

日本人観光客がゴルフ、ダイビングへと訪れる南の島においても、ちょっと奥地に入りさえすれば、大いなる「辺境」が存在し、新人民軍の残党が活躍したりするのではないかというのは、楽しいロマンである。しかし、現実のフィリピン社会を描いたことにはならない。冒険小説としてはよく出来た作品であるが、異文化の人と社会を描いた小説とは言い難いのである。現地生活をよく知らない日本人作家の限界なのかもしれない。

誇りを持て ★★★★★
拝金主義にまみれているのは、何もフィリピン・セブ島だけではない。この間私が実際に旅してきたアジアの都市はみんなそうだ。いや、形こそ違え、日本がそうでないと誰が言えるだろう。この小説では拝金主義がむき出しの形で現れ、私たちの住む国ではそれが洗練された形で現れるだけなのかもしれない。『誇りを持て』たった15歳のジャンピーノ(トシオ・マナハン)は私たちにそう言っている。
これは過去の物語ではない。現代『世界』の物語だ。凄絶な殺し合いが続く下巻ではあったが、読後感は「希望」に満ち、なぜかさわやかだ。
アジアの田舎社会は実はアジアの縮図 ★★★☆☆
平成12年上半期直木賞作品。主人公ジャピーノ(日本人とフィリピン人の親とする男の子)ことトシオ・マナハンのフィリピンセブ島での成長記。日本に働きに出て一時帰国=凱旋した“クィーン”の出現によってトシオの周囲は俄然慌ただしくなる。

〝まん丸い虹〟が出る虹の谷の行き方を知っているのは村でトシオのみ。虹の谷に住むたった一人のゲリラ、ホセ・マンガハスとの関係・メグとの淡い恋・ラモンとの葛藤等が時として謎、時として挿話的に語られながらいつしかトシオは自分でも気づかないうちに一人前の人間として成長してゆく。

フィリピンの混沌とした世界を政治の絡みと、同じアジアの国日本との関係をふまえながら背景として置く事を物語の背骨としている。ここのところの理解を得られるか!得られないかがこの作品を楽しめる・楽しめない、のpointと思いましたが・・・・如何!