クルドの叙事詩である。
★★★★☆
人々は、マハバートに集まってきていた。
運命の糸が絡みあるように、
折り重なっていく。
イラン革命防衛隊のサミル・セイフは、
幼きころから、
純粋にイマム・ホメイニの聖なる革命を盲信し、
風紀の乱れつつある革命防衛隊の、
綱紀粛正を願っていた。
クルド・ゲリラのハッサン・ヘルムートは、
抑圧され続けたクルドの独立のため、
そののろしを上げるべく、マハバード攻撃を目指していた。
複雑な過去を抱えた女シーリーンも、
ただ一つの思いを遂げるために、
マハバードに来ていた。
そして二人の日本人“ハジ”。
一人は、
武器商人として名高く、
クルド人たちの依頼に応じて、
大量のトカレフとともにマハバードに向かっていた。
もう一人は、
奇異な運命により片足を失い、
隠棲しつつも、
マハバードを中止していた。
そしていよいよ、決戦の火ぶたが落とされた。
後半は一気に読んでしまうのは、
やはり、
人物描写の豊かさのおかげだろう。
彼らが、何を話し、
何をしようとしているのか。
きっと、そのことを知りたいと思うのだ。
狂っていく歯車
★★★☆☆
日本人武器商人”ハジ”はグルジアマフィアから武器を調達し、
イランに密輸する。しかし、その過程で少しづつ歯車が狂っ
ていく。
各章で繰り広げられた様々な人々の物語が、終章で一気に
集束すのだが、今一つ期待はずれだった。様々な物語を読み
進めていただけに、最後はもう少し盛り上げて欲しかった。
二人の日本人”ハジ”も、なんだか厭世的で気が滅入りそう
になった。
上巻に比べ
★★★★☆
上巻はスピード感、ハードボイルド感たっぷりであったが、物語が進むにつれパワーダウンしたように思う。それでも、船戸作品は特上のストーリーを紡いでくれますが。
さすがに凄い
★★★★★
船戸作品を初めて読んだが、描写がすごい。まるで太いノミでくっきりとえぐったようなビジュアルな描写である。クルドの街の描写などもノンフィクションに照らし合わせると正確なのがわかる。はらはらどきどきのサスペンスもあり。クルド民族に小説の形で正確な光を当てたことも高く評価していいのではないだろうか。主人公のような日本人がいるとは、あまり思えないが。