『ノンフィクション』に『フィクション』をコラージュした、新しいテーストの歴史小説
★★★★★
著者・船戸さんも時々訪れる、とある荻窪の『居酒屋・女将』から推奨され、本作品1〜4巻までを読んだ。40年以上船戸さんを知る『女将』が、初めて褒めた作品だそうである。
嘗て、ゴルゴ13の脚本なども手掛けた著者は、男の好奇心を擽る『フィクションの世界』を描かれた。しかし本作は、日本人であれば小学生でも知りうる『ノンフィクションの世界・満州』に『フィクションの世界』をコラージュ(糊付け)したものである。しかも、『ノンフィクション:満州国の歴史に名を刻んだ人物』は、作品中、台詞を発しない。ストーリーを創るのは、コラージュされた『ノンフィクション:敷島4兄弟およびそれを取り巻く人々』である。多くの歴史小説が、『史実の人物』に語らせるなかで、本作は、『フィクション』をコラージュし、『フィクションの人物』が語ることで、『史実』を躍動させる。この構成が何より面白い!
『国民』が存在しなかった『満州国』という『国家』が、何故、存在しえるのか。官僚・馬賊・軍人・アナーキストという立場を異にする、敷島4兄弟が、『満州国』を巡って、『追従』『無関心』『肯定』『否定』という4機軸でストーリーを展開する。それは、肯定・否定・昇華という弁証法的アプローチで『満州国』を描き、読者に『満州国』の存在感をよりリアルに感じさせる。
さて、本作品はまだまだ続く。異なる4機軸・敷島4兄弟が『風車』のように回転しながら、『ノンフィクション』の世界を駈け巡る。この『風車』の中心は何か。それは、今後の作品進行のなかで明らかにされるであろう。肯定・否定を繰り返す中で、『昇華』される『真理』は何か。新鮮なテーストの歴史小説を発見した喜びに、私は浸っている。