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終着駅 (集英社文庫)

価格: ¥650
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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殺人事件が絡み合う構想が面白い ★★★★★
本題になっている「終着駅」とは、この物語の場合東京そのものを指している。
全国から様々な人間が集う大都会東京の素顔を、この物語によって垣間見るようでもある。

地方の田舎から出てきた若い女性や男性たち。そして金策に訪れた地方の事業主。それぞれはこの大都会での成功を夢見ながら訪れたのであるが・・・。
全くの他人同士であった筈の人間たちがやがて見えない糸で結ばれていく。
その関係が次々に起こる殺人事件によって明らかになっていくストーリー構成が素晴らしい。

特に突飛な事件でもないが、殺人や盗難といった普通の事件が複雑に絡み合い、刑事らが苦難に陥りながらも必死に捜査する展開は読んでいて興味が沸く。

事件の解決後、牛尾刑事が悲しげに言っている台詞がこの物語の意味を突いている。
「終わりはきっと始まり」、それが「終着駅」なのかもしれない ★★★★★
森村誠一の「終着駅シリーズ」はすでに20回以上のテレビ放映がなされ、ファンにはお馴染みの作品である。本書『終着駅』はその記念碑的作品である(巻末の「解説」にあるように、前著『駅』が意味する「始発駅」とは対をなす)。錯綜した人間関係が織りなす幾多の事件に読者をすんなりと引き入れるだけでなく、その事件の展開が実にダイナミックな様相を呈している。情景・人間描写にも味わいがある。途中から一連の殺人事件の容疑者として浮上する人物が「犯人」であることは分かるが、ホテルでの密室トリックがなかなか解明できない。その「もどかしさ」も興味をそそる(トリックの考案・解明には、作者の10年に及ぶホテルでの勤務経験がある)。第18章の「チェンジされた密室」で事件の一応の決着をみるものの、第19章「最後の犯人」でもう1つの事件が暴かれる。「最後の最後まで事件は終らない!」というストーリー展開に読者は決して飽きることがない。とはいえ、人間関係そして複数の事件が錯綜しているので、気をつけて読んでいかないと、それらの関連性が十分に消化できない可能性もなくはない。途中で読むのをやめて明日にすることはできない理由の1つもこの辺にありそうである。なお注文をつければ、1)棟据刑事とならぶ森村作品のヒーローである牛尾刑事が登場するのは110頁からで、いささか登場が遅いこと(同著者『山の屍』は「牛尾刑事事件簿」と表紙に明記されているが、牛尾刑事の活躍は少なく思えた)、2)本当に三上潤子は暮坂慎也との結婚「後」に、奪われた三千万円の持ち主が彼の父親であることを知ったか。彼女は「最後の犯人」によって殺害された以上、真相は闇の中であるが、「暮坂」という苗字は珍しいゆえ、彼と出会ったときに、その件と結びつけることは可能ではないのか、という2点くらい。いずれにせよ、テレビ放映の原点ともいうべき作品であり、読み応え満点である。
運命と密室 ★★★★☆
『駅』『終列車』から続く三部作の最終作。とは言え物語がつながっているわけではありませんが、中央線沿線の田舎町(おそらくは長野県)から東京に出て来た人たちの運命と悲哀を描いているという点で色調は共通しています。但し、本作では運命に翻弄される人々を描くだけではさすがに案が尽きたのか、初期の森村が得意としていたホテルでの密室トリックが登場すします。『駅』『終列車』の路線と初期の傑作『高層の死角』を融合したといったところでしょうか。

個人的には、『駅』『終列車』と比べると筆致が急ぎ過ぎのように感じました。被害者たちの生前の姿をもっと丁寧に描くとか、刑事たちの群像をもっと描くとかしていれば、更に感動が得られたはずだと思うのですが。