見た感じの第一印象は難しそうで最後まで読めるかな?でしたが、意外とテンポがよくて読みやすく、あたしはスラスラと1日で読むことができました。
何より衝撃だったのは、「神」の書かれ方。
あたしの中での神のイメージといえば『万能で、万人を愛していて、慈悲と慈愛に満ちている』みたいな感じだったんですが、この作品の中では全然違った感じで書かれていて、こんな風に書く人もいるんだなと新しい発見をした気分でした。
結構難しい単語や話が出てくるので、本を読みなれない人には厳しいかもしれません。
が、この本は読む価値があるとあたしは思います。
個人的にはあのプロローグはない方がいい。主人公はゲキガ世代と言うべきか、劣等感を乗り越えてある程度まで自分の力で這い上がってきた若者という感じでイジケかたすらも共感できた。文体も読みやすい(その理由のひとつといえると思うが登場人物に借り物が多い。小松左京作品で見たような人たちがぞろぞろ出てきたと思えば、あの芳村老人てドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」のゾシマ長老がモデルでは)。だがこの作品を何より特長づけるのは「古代文字」という人間の論理レベルを上を行く存在とそれをとっかかりとして感知される「神」の存在だ。いまだ絶大な影響力をもって人間を支配し、その恐ろしさを見せ付けるように後半「かれ」に近づこうとした者たちが見せしめのようにズバズバ殺されていく。テンポが速すぎてか安易な描写も見えるが、絶対者を目にしほぼ死を覚悟しながらも戦いを放棄しないことを誓う第三章の思いつめた空気も「神狩り」の魅力だ。
聖書では神は自分に似せて人を造ったとあるが現在神はどんな姿をしているのか、即ち2000年代が舞台の「神狩り」はどういう描かれ方をするべきなのか。その名で呼ばれる不文律が作中にあるような「渇き」を源流としているなら、人が人である限り30年どころか未来永劫格闘し続けるべきテーマなのかもしれない。