「生」や「死」と向き合う話ではない。
★★☆☆☆
死を目前とした患者たちの望みを、ひとつだけ叶える「仕事人」が主人公
の連作集です。
主人公がいくつもの死に立ち会う事で何を感じ、どういう人生観を持つのか。
そういう哲学的な深まりを期待して読みましたが、そういう本では無いようです。
主人公は患者に共感して、切ない思いを味わったり理不尽さに怒りを感じたり
はするものの、「死そのもの」や「生」に対して自分なりの深い考えを持つ
ようになったりはしません。
何でそこを外して書くのかな〜??という疑問が残りました。
しかし、ただの物語として読むなら、起承転結もしっかりとしているし、
リアリティもあるし、それなりに面白いんじゃないかと思います。
一瞬を
★★★★★
主人公は大学生。病院で掃除夫のアルバイトをしていたが、とある理由から「死ぬ前に願い事を一つ叶えてくれる」という、その病院では伝説である仕事人になっていた。
自らの進路に戸惑いを覚えつつ、身近にある多くの死の足音を聞きながら彼は何を思うのか?
この本との出会いは「衝動買い」でした。本屋をフラフラしていてふと題名が目に付き、そのまま購入。私はこういった買い方はあまりしませんが、結果としては「当たり」でした。
なんと言えばいいのでしょう?儚い、とも違う何かが感じられる作品です。
でも、「優しい」とは何か違う感覚がありました。主人公は単純に優しさから手を貸しているわけではないような……そんな気がしました。彼は、どこか膜を隔てて見ているような……。
文体は極めて美しく、効果的な比喩や描写が光ります。本多 孝好氏の作品はどれも面白いと感じましたが、私はこの「MOMENT」を特に気に入っています。
少し心を洗いたくなった時、何かを考えたくなった時、手にしてみてはいかがでしょうか?
命の最後の瞬間、あなたは何を思いますか?
途中まで、期待させるのだけれど・・・
★★☆☆☆
短篇4篇で綴られていく、赤の他人の死に様。人が死んでいくのを、傍で眺めているのは楽しい?死んでいくものが、最後の力で描き出す物語を、優しさで着色してあげるのって、気持ちいい?・・・と、かなり歪んだ読み方をしていたのですが、3篇を読み終えた時点で、ふと気付く。死が急速に主人公に近づいてきてるのではないか、と。無責任に、或いは優しさで覆い隠した好奇心で見ていられた死が、否応無しに近づいてくる。4篇で、どうやってまとめるのだろう!?と期待した時点での評価は星5つ!読み終わっての感想は星2つ(笑)。
芸術
★★★★★
この本、装丁がとてもキレイです。
この表紙は、イタリア現代美術の作家であるLucio Fontanaという、
キャンバスを一色で塗り、穴や切れ目を入れる手法を用いた彼の代表的な作品によるものです。
文庫化されてはいますが、ぜひハードカバーで買って本棚においてほしいです。
ちょっとがっかり
★★★☆☆
瑞々しさを感じさせる文体、恋愛の儚さをうまく滲ませるストーリーテリングが、病院を取り巻く状況を専門的に取り上げることにより、薄まってしまったように感じました。テーマが死なのでしかたがなかったのかな。