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追憶のかけら (文春文庫)

価格: ¥860
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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二転、三転、四転 ★★★★☆
物語が二転、三転、四転する渾身の一作でした。
ものすごい物語を読ませられたあとで、それがまったくちがうと知らされる事実。
そして、さらにどんどんと謎は深まっていきます。

作家の手記から広がる謎。
膨大な仕掛けがほどこされていますが、あまりに仕掛けが大きすぎて、ご都合主義であった感はいなめません。
もちこまれた手記をまるで疑いもせず本物だと信用してしまったり。
主人公をバカにすることによって話を進めていき衝撃を出すというのは、少し安直だと思いました。

ふみさんを強姦した相手が最後まで罪を告白しない点も謎でした。
ここまで言ったのならこの先もいうだろう、という気がしましたし、まずそれより、復讐するためにお手伝いの女性を強姦するというのはかなり解せないですし、後味がものすごく悪いです。

佐脇を自殺においこむにはそのくらいのことをしなければいけなかったんだろうけど、それもご都合主義だと思いました。

ただし、何度もどんでん返しを受けたのは事実。
読者の感情の行き場がない ★★★☆☆
 不思議な作品である。
 貫井作品らしく、一つずつの場面には圧倒的な読み応えがあるが、全体を考えてみると、疑問点が次々と沸いてきて、個々の場面で湧き上がった感情の行き場がなくなる。

 最たるものは、56年前に自殺した作家・佐脇依彦の手記だろう。旧字、旧かなづかいで書かれた圧倒的な迫力の手記で、これだけで独立した作品と言っていいほどの密度があるが、それには結局、主人公(国文学者)の研究者生命を奪おうとした「犯人」の悪意の手が加わっている。その悪意を前にして、手記そのものへの「感動」はどこへ行けばいいのか。

 「犯人」の意図も疑問が多い。その悪意の強さからすれば、主人公の妻の事故死も、本当に事故なのか?、という疑問が当然に出てくるが、作中では誰も疑わないのが不思議。

 もう一つの大きな問題は、主人公の魅力のなさである。少なくとも、国文学者として有能でなければ、話にならないと思うのだが、佐脇依彦の手記の疑問点にも気付かないのだから、読者として感情移入するのは難しい。
結末にがっかり ★★★☆☆
途中までは、「これはすごい小説だ!」と思っていたのに、尻すぼみでがっかりするミステリは沢山読みましたが、私にとって、この作品それらのがっかりミステリの筆頭格です。

竜頭蛇尾とは、こういう作品のことを言うのではないでしょうか。黒幕の正体と、その人間像が、あまりに陳腐なのに呆れてしまいました。
主人公を絶望の淵に追い詰めた恐るべき「悪意」の正体が、実に気楽な人物だった、というところにある種の凄みを出そうとしたのかもしれませんが、その試みは成功していないと思います。

終戦直後に綴られたはずの手記の文体がひどく現代風で、「作者も、昔の文体までは模倣できなかったのだろう」と思っていたら、ちゃんと種明かしがありました。でも、現実に作者は昔風の文体が書けなかったのではないかな。
女性が驚いた様子を表現するのに「固まった」などという表現を用いている時点で、ダメだなあ・・と。

ラストの大団円にも無理があると思います。女性として、主人公の妻があのような(夫にとって都合の良い)書き置きを残すということに共感できず、「ご都合主義」と強く感じました。あの書き置きは蛇足では?
この作者の描く女性は、いつも魅力に欠けるというか、作者の都合のためのみに存在するようで、そこが非常に残念です。

・・こういった次第で、結末に大いにがっかりさせられた作品ですが、途中まではかなり楽しませてもらったので、星は三つにしました。
結末に残念・・・。 ★★☆☆☆
主人公はうだつの上がらない大学講師、松嶋。3か月前に別居中の妻を亡くしている。
愛娘は妻の実家に取られ、義父は松嶋の上司である教授麻生であり、娘を引き取るには業績を上げなければと思っている。
その松嶋のもとへ自殺した故作家の未発表手記が舞い込んでくる。これを元に文献を書き、世に認められれば愛娘を引き取ることができる!
ただ、文献を発表するためには故作家の自殺の真相を解明するという条件がつけられる。
調査を開始した松嶋は徐々に真相に迫っていくが、共に自分を破滅させる悪意に引きずり込まれていく。
悪意を持った張本人はだれかを探していく経過がだらだら。最後にその人物が判明するが、なんでやねん!!っていうお粗末・・いや、結末。
動機がかなり苦しいです。その頃にはボリュームのある文庫が重く重く感じて、早く終わってくれないかなーという状態でした。
ひとつ、愛するべき登場人物がいなかったのも残念。
Gを感じる!加速度おっけー! ★★★★★
うおぉ。

個人的には貫井徳郎の傑作ぞろいの秀作の中でも最高傑作!

妻を事故でなくしたうだつのあがらない教授。
妻の両親に自分を認めてもらおうと、もちこまれた昔の作家の未発表の手記を入手し、
そこに隠された謎を解き明かそうとするが、実はそれは、仕組まれた罠だった・・


まずその作家の手記がすごい。
悪意に満ちあふれた罠にとらわれ、追い詰められる作家とその周りの人々。
作家が犯した罪とはなんだったのか?犯人は誰?いや、そもそも被害者は誰だったのか?
二重、三重にはりめぐらされた罠に翻弄される主人公に、いつしか引き込まれる。

そうして、現実にも、まるで手記の悪意がにじみでてきたかのように、
教授とその周りにちらほらと悪意の影が・・


どこまでが本当で、なにが嘘なのか?


はらはらしながら一気にページをめくってしまった。

慟哭やプリズムのようなダイナミックな驚天動地のエンディングではないけれど、
しかしながら最後に、切ない温かさが胸を打つ。

残酷な、でも、最後に救いのある小説。
この小説は、映画化される(された?)愚行録以上に、優れていると思うのだが。