ある意味ホラー
★★★★☆
一言怖いです。
由美香は10歳も年下の彰男と結婚する。
夫を遠藤君と呼び、
異常なほどに夫の行動をチェックする。
10歳年上の35歳というだけで不安を隠し切れない由美香の行動は
どんどんエスカレートしていき、
彰男の同窓会にまで乗り込み、彰男を困惑させる。
しかし、その行動の裏には由美香の悲しい過去があった。
その過去を知ったとき、彰男は由美香のことをさらに愛おしく思うのだが・・・。
彰男の優柔不断ぶりが笑えるんだけど、
というより由美香の行動に対してほとんど腹を立てないその寛容さは、
こちらも異常といえば異常。
お互い様?と思えるような夫婦関係なんだけど、
なんだか、辛い夫婦関係だ。自分には到底出来ないけど・・・。
あっという間に
★★★★★
2時間もあれば十分読めてしまうほど、展開も早く、とにかく面白かった。私の読んだものがたまたまだったかもしれないが、年の離れたカップルを題材にした小説が吉村作品には多い気がする。そんな中でもどれひとつとしてはずれたものはなく、この作品もご多聞に漏れず退屈どころか結末が気になってついつい最後まで読み進んでしまう。フィクションとノンフィクションの間に横たわる恐怖がよりリアリティーがあるものとして迫ってくるからだろうか。この作品も、最後の場面までにさまざまな伏線が張り巡らされていたことに気がつかないが、そこに気付いた時の面白さと怖さは計り知れない。そう思って読むと表紙の作りも意味あるものに思えてくる。10歳年下の好青年と結婚した35歳の由美香、彼の一挙手一投足が気になり、日常の干渉、検閲にも病的なものが混じる。彼女も生育過程に深い傷を持ち、異常に偏愛的であるのだが、最愛の遠藤くんが中学の同窓会に出席することになってから事態は一気に悲惨な方向に進んでゆく。遠藤くんに中学時代から思いを寄せていたのが本当は誰だったのか、そして遠藤くんに密かに好意を寄せていた美人の転校生が急に学校に来なくなった理由が何だったのかそれが判明するシーンもかなり意表をついているというか場面が迫ってきそうで怖い。そして遠藤くんが心から妻である由美香と一緒にやっていこうと決意したのも束の間、由美香は遠藤くんを愛しすぎたが故の悲しい結末を迎えてしまう。2人は再び幸せな家庭に戻ることはないのだがそのストーリーには影に意外な人物の悪意があった。すべての成行がある人物の何気ない言動によりすでに用意されていたものであったとしたら…最後にほくそえむのは誰なのか。言いたくて言いたくて仕方ないけれどあとは読んでみてのお楽しみ。お奨め度NO1です。