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生ける屍の死 (創元推理文庫)

価格: ¥1,260
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
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突飛な設定だが必然性のある真相 ★★★★☆
死者が蘇る,というありえない設定であるが
きちんと真相に反映されている.

こういう凝った設定は結局うまく使いこなせず
中途半端なオチになりがちなのだが
この作品ではそういう不消化感もなく
緻密にまとまっているなと感心した.
ミステリー本来の謎解きとは少し趣が違うが
こういう意外性もありだろう.

またアメリカの埋葬や葬儀の風習やエンバーミングという
耳慣れない技術をよく調べて取り入れられており
ミステリーの小道具としてだけでなく
作品全体にアメリカの田舎町の雰囲気がよく表現されている.

ただ,懲りすぎていて少々冗長な印象もなきにしもあらず.
その点を1つ減点.
異世界ミステリの記念碑的作品 ★★★★★

死者が甦るという異世界を舞台にしたミステリ。

主人公であるパンク小僧グリンからして、何者かに毒殺された後、
甦り、ゾンビになった状態で探偵役を務めていくことになります。


蘇生したグリンは、生前と変わらない精神は保持しているものの、
時間が経つにつれ、肉体は確実に腐敗していき、乾燥のため目が
混濁し始めます。

腐敗を遅らせ、周囲に自分が死者であることを悟られないようにするため、
グリンは自らに防腐剤を投与し、サングラスをつけなくてはならなくなります。

この“蘇生者”の描写は、甦りがルール化されている本作において、関係者が
生者と死者どちらであるかを見極める、指標の役割を果たしているといえます。


また、本作で展開される「死」にまつわる様々な哲学も、
たんなる装飾的ペダントリーにとどまらず、犯行動機を
読み解く際の重要な手がかりとなっています。

家族に囲まれた穏やかで親密な死を望む者やキリスト教的信条によって
肉体復活を信じる者、そして、資本主義の論理を振りかざし、死を商品化
しようとする者……、それぞれが自分の哲学に基づいた行動することで、
通常の世界ではあり得ない因果の模様が描かれていくことになるのです。




死人が生き返るだけの一冊 ★★☆☆☆
福田和也の『作家の値打ち』で大絶賛されていた一冊。

大絶賛するほどではなく期待はずれ。死んだ人間がよみがえる、という設定がユニークなだけだと思う。そもそも、推理ものって、いろいろなルール(人生は一回、とか、時間は逆に流れない、とか)の中で突飛な仕掛けを作って読者に見せるものではないか。ルールがあるからおもしろいのだ。死んだ人は一回しか死なない、というのは、推理ものの中のもっとも重要なルールであって、それを覆すのなら、もっともっとラディカルな作品とするべき。形式は本格、ルールは破る、というのでは中途半端。

<「すまん、ちょっと、死んでたんでな。全然聞いてなかった。悪いがもう一度最初から繰り返してくれないか?」>
(p. 568)

こういうのりは嫌いじゃないが。悪いがもう一度ラディカルにやり直してくれるともっとおもしろくなる。
迷作ではない、名作! ★★★★★
非常に印象深い1冊でした。ルール破りだとか荒唐無稽だとかいう意見も多いと思うけど、作者はその異常な状況設定をとくに意識させないよう、さりげなく親切丁寧に読者を導いていくことで、いつのまにか小説のプロットを構築してしまっています。見事です。(じっさい、作品世界において死者の蘇りについては、事件に関わる一族・関係者以外、それほど大問題となっていない)シニカルで比喩表現たっぷりの語り口は、まるで海外作家のようで、思わず途中で日本人作家であることを忘れてしまいました。葬式儀礼にはじまり、建築学やら歴史やら哲学、解剖学などなど、作者の広範な知識にも脱帽です。やや冗長かな、中だるみするかな、と思っていたら、中盤にトレイシー警部という、とてもおちゃめなキャラクターがでてきます。ドタバタもあるし、ところどころに噴出するブラックユーモアが、この作品をただ暗いばかりでない救いのあるものにしています。作者のサービス精神が伝わってきます。あまりいうとネタバレですが、死者から被害者から○○○まで生き返ってしまうので、当然このミステリーは犯人探しよりも、「動機はなにか?」が最大の謎となります。その謎が解けたとき、あなたは人間が未来永劫解放されることのない、生と死の哀しみを味わうことでしょう。
臭いがしそう… ★★★☆☆
殺人事件が起きるものの、死者は蘇って普通の生者のように動き回ります。
なので、気持ち悪いブラックコメディになっています。
事件を調べ、推理するのも死者。
ですが無敵ではなく、死者として、リアルに腐敗していきます。
意識としては生きてるのに、体は腐っていく…恐怖ですね。
それを食い止めるのが、エンバーミングの技術。
火葬がメインの日本では馴染みがありませんが、これいいですね♪
笑顔で死んでるってのがいい。

なんともグロテスクな雰囲気ですが、最後はとても切なかったです。