心を揺さぶられる一枚
★★★★★
このCDは間奏曲118-2を聴くために購入したが、こんなに感動するとは思わなかった。
グールドの音の一粒一粒が聞こえてくるバッハのような間奏曲を聴いていたから、なおさら比較されてこんなにもロマンチックで優美で且つドラマチックなのかと心を突かれたような感じだった。
もちろん、メロディーとされる声部はどれも聴こえてくる。グールドの弾き方のようにどの音にも役割がちゃんとあるのだと感じさせつつも、随所で感情がじわりじわりと伝わってくる。やさしく甘いメロディー、教会で聴いているような美しい音が来たかと思えば、ドラマチックな展開になったり、とても心を揺さぶられる一枚だ。
私はブラームスの間奏曲118-2を薦めるとしたら、このCDを一番に薦めたい。
多少荒削りだが、すばらしい
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ブラームスを形容する際よく使われる、「重厚かつ甘美」ということばは、
演奏するうえでの難しさにも反映する。
ゆっくり深い響きにどっぷりとつかってしまえば重苦しくなってしまい、
かといって、あっさり弾いてしまえば、ブラームスの深い精神性が表現できず
台無しである。
グリモーの演奏は、そのことをよくわかっているのだと感じさせる。
ここに演奏されるブラームス後期の小品は、余計な音を一切そぎ落とした上で、
簡潔かつ深遠な世界を提示してくれるものだが、であるがゆえに、演奏は
困難を極める。一つ一つの音を大事にしないといけないからといって、躊躇して
いる暇はない。
彼女の演奏はそういう意味で、うまくいっているといえるだろう。
そして、何よりもすばらしいのは、渋面のブラームスの前向きな気持ち
を感じとっていることである。ブラームスは、ある意味で現実主義的であり、
現実を見る透徹した洞察力を持つがゆえに、きちんと前を向いて進んでいく
目線の高さを我々に教えてくれるのだ。
そのことをきちんと感じ取らせてくれる演奏なのだから、やはりすばらしい。
左利きの孤狼
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こんなに情熱的野性的で色気のある演奏をできるピアニストは中々いるものではないと思う、左利きのせいか立体的で聞くものをグリモーの世界に引きずり寄せる。ルプーの渋い演奏が好みだったがこれも素晴らしい!ブラームスが生きてたら彼女を抱きしめてブラボーと言うだろう
美しい閃き
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グリモーらしい閃きと美しい叙情に溢れた演奏だと思います。確かに、リヒテルやヴェデルニコフ、バックハウスなどの渋いダンディズムも魅力的ですが、メロディストとしてのブラームスの魅力を若々しく細やかに歌ってくれた名盤としてお薦めします。でも私の隠れた一押し名盤は、イモージェン・クーパー盤。ブラームスのピアノ曲を愛する方は、必聴です。
おおげさでない、ブラームス
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グリモーは、美人ながら自閉気味なところがあり、現在はアメリカで、狼の多頭飼育をしながら暮らしている、というピアニストである。しかし演奏は、そうしたキャリアから予想される、なにかエキセントリックさのようなものは、まったく感じられず、正統派の繊細でエレガントなブラームスである。六つの小品op118なども、さらりと弾きこなされていて、ともすれば重くなりがちなブラームスオンリーのアルバムが、BGMにもできるほど、流れるような印象に仕上がっている。選曲から受ける印象以上に、しょっちゅう聴ける、手に入れて損がないCDだと思う。