色彩豊かな、映画的童話
★★★★★
色使いが、シェルブールとともに
強調されております。
夢のような色使いです。
あとは
単純なストーリー(ペローの童話「ロバの皮」が原作)
のなかに
美しさと
外観から判断する人、内面の美しさまで見通すことのできる人を
区別して描きます。後者は勝利するのです。
簡単に、「愛」を求める者どおしの出会いのストーリー。
そこに
父親や、妖精などが絡んできて
曲解する愛が表現されるのです。このことは
本当の「愛」はどのように実現されるのかを強調することとなり、最終的には
この人たちも自分の身の丈にあった愛を見つけるのです。
外観を「ロバ」を背負うという形で
表現するところはすごい。さらに
そのロバは金づるだったので、
無償の愛を、嫌がらせ的に求めたのに、実現してしまう現実の怖さ。
そして対比的に
愛する人を求めて、自らアプローチする王女。
それにこたえて
王子も形式的には平等に審査します。でもこれは「出来レース」なのです。
この「愛」の成就についての作品で
とても楽しめました。
最後に、ヘリコプターは
そんな話もあったよ、今は、現代で、それを再現しているんだ、という
フィルムの皮肉もありました。これは、今では夢物語、になってしまったという
ことなんでしょう。ということは
この映画から数十年たった今ではもっと夢の夢。こんな映画さえ生まれない土壌
があります。
青の世界、赤の世界、白の世界、まあトリコロールなんですが
青(自由)確かに若い時の自由さ
赤(博愛)王子のスタンスがそうかな
白(平等)二つの国が、妖精も隔てなく平等に家族となる
という感じでしょうか。フランス人だったらもっと意味がわかるんでしょう。
最後の方、わざと「ロケ」の感じ出したの、わかりますでしょうか?
映画ですから。はい。
「動くキラキラ光る絵本」のような映画です
★★★★★
昔一度見てはいたのですが、最近ジャックドゥミ×ルグラン×カトリーヌドヌーブの組み合わせの「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人」「モンパリ」を劇場で続けてみたら、3人の世界の魅力のとりこになってしまい、この3人の組み合わせの残りである「ロバと王女」を再び観たい衝動にかられ、気持ちが抑えられず購入しました。
2005年再上映されてからのDVDで最近発売されたわけではないと思いますが「初回限定豪華パッケージ」が本当に豪華で表紙のイラストもものすごく気に入っています。ブックレットやミニポスター、ディスク2枚で税込み4935。宝物です。
絵本の中にはいってしまった気持ちになれます。
目の覚めるようなリニューアル版
★★★★★
その昔、とっても貴重なテレビ放映で見たときに、「なんとキッチュな作品!」と感嘆。数年前の映画祭(ドイツだったか)にあたりデジタルリマスターされ、目の覚めるようなカラーでスクリーンで再会したときに、あまりの発色のすばらしさに別作品かと思いました。おそらく、ペロー原作の童話の映画化ということで、フランスの子供たちは誰もが知る物語だと思います。この映画は、マニア向けでレアな作品なのではなく、フランスでは公開時から子供たちに定番的に受け入れられてきた、とそのときに知りました。個人的にも、いまは「キッチュな作品」ではなく「個性あふれる名作」として受け止めています。
ただ、ちょっとしたずらし方は大きな楽しみの一つ。子供向けのストーリーは大きくかえずに、でも70年代らしく脚色された内容は、見た後じわじわと後味となって広がります。従者の顔や馬にまで色を塗ってしまう色彩の徹底、父娘の関係の強調、空想シーンのボートの上でドヌーヴの<スモーキング>などなど。特にすばらしいとおもうのは、<マンハント>の側面の強調でしょうか。
たとえば、小屋の窓から覗き込む王子にむけてドヌーヴが鏡越しに放つ、ほんの少しだけ口元にうっすらと浮かべる<艶笑>(っていうのかニヤケっていうのか)は、絶品!
私はこの場面の演出が気になったので、おもわず岩波文庫の原作をあたってしまいました。原作者ペローもうまく書き込んでいます。
また、リラの精を演じるデルフィーヌ・セイリグは、気ままに囁くようなハスキーボイスと、ミニスカートからのぞくほっそりとした脚線美で魅せる。彼女の歌は彼女自身が歌っているのもいい(ドヌーヴの歌は実は吹き替えです)。この妖精も、またちゃっかりと<女>だったりします。
DVDソフトとして見ると、映像特典はなかなか充実しており、アニエス・ヴァルダによるドキュメンタリーや子供向け上映会の模様が収録されています。後者では、ナレーションや歌のナンバーをそっくりそのままカメラの前で披露する子供たちがかわいい。しかし、一番のおすすめはカラオケ。「愛のケーキ」を含む数曲が、フランス語の歌詞字幕入りでカラオケ(声抜き)が入っています!
このナンセンスさはくせになる。
★★★★★
なんておばかな御伽噺なんでしょう!
格となるストーリーはシンデレラ系譜だけれども、この作品がそれでいてオリジナルな魅力を放っている要因は真っ当な筋書きを少しずつ、ずれたものへと変えていったところにあると思います。「シェルブールの雨傘」が思っていた以上に現実的なお話だったので、「ロバと王女」のはみ出し具合は逆に新鮮そのもの、思わずくすりとさせられちゃいました。
説教じみた教訓を受け付けなくなった大人たちにはぴったりでは?
ラストがまたすごい、そうきたかと叫びたくなります。
一番好きなミュージカル
★★★★★
『シェルブールの雨傘』とセットで名画座で見て,大好きになった。
題名だけ聞いたときにはあまり期待していなかった。ちなみに原題を直訳すると「ロバの皮」。
いかにも受けなそうなタイトルだと思うけれど,この題名でフランスでは大ヒットしたというから,フランス人というのは素敵に面白い国民だと思う。
シャルル・ペローの童話を元にした他愛のないおとぎ話なのだけれど,軽快でシンプルなストーリーは,きっと何度見ても飽きがこないし,疲れない。アレンジを変えながら幾度も歌われる不思議な雰囲気の主題歌がすごくいい。一度聴いたら忘れられないメロディ。カトリーヌ・ドヌーブの美声ともよくあっている。
セットや衣装の形や色遣いなど,隅々にまで凝りに凝った感じで,遊び心も満載。監督はじめスタッフ一同,気合いを入れて楽しんでつくった感じが伝わってくる。大の大人が真剣に遊んでいる,その遊びに賭けている様子がいい。大人びていて子どもっぽいような,いかにもフランス的な精神性がみごとに実を結んでいるように思う。ジャック・ドゥミ監督は,この映画のアイデアを何十年だか十数年だか,とにかく長いこと暖めてきたのだとか。映画を見たあとその話を聞いて,この監督が大好きになった。
おすすめです。同監督の『ロシュフォールの恋人たち』も,早く安価で再販してほしい。