著者は「眠れる美女」「死体紹介人」をモノし、「仏界易入、魔界難入」を標榜した川端康成の研究者です。その人物が猟奇的事件を起こします。
ルネを殺害スル描写、切り取った肉の脂肪を「トウモロコシ」と描写するそのリアルさ・・・実体験が持つ迫真性を感じつつ、同時に、吐き気を覚えつつ読みました。
「泥棒日記」を書いたジャン・ジュネの著作のような自伝的傑作と言えなくもありませんが・・なんと評価したら良いのでしょう・・単なる創作であれば、嫌悪感を覚えつつも、その想像力のすばらしさを賛嘆できなくもないのでしょうが・・、実体験、しかも殺人と人肉嗜食のそれですから・・評価するに当たって、人間としての道徳性が頭をもたげてまいります。
発売自体の異議を唱える向きもあろうが、世に出る価値はある本だ。人を殺し、その肉を食い、逮捕され、不起訴となって精神病院に入れられ、退院して外の世界に復帰した、なんて経験をした人物の生の声が聞けるのだから。資料的な価値はもちろん、小説としても大変面白く読み進むことができた。が、心臓の弱い方はご遠慮ください。