利休の名から茶道を連想するのはたやすい。しかし本書は後に「茶聖」と呼ばれた利休の茶人生だけでなく、一個人としての人生、さらには時代背景である戦国大名から豊臣政権、それに対抗する堺町人らを生き生きとつづっている。また、いかに茶の湯が権力を支える文化として発展したかも記され、千利休を通して日本史を知るおもしろみがある。
著者は利休を歴史上の大人物でなく若干28歳の商人、夫、男、茶人として描き、読者に新たな「千利休像」を提供した。人妻おりきのキリシタン信仰が、茶頭にまでなった利休に多大な影響を与えるところに著者の信仰要素が盛り込まれた作品。(青山浩子)