ベッドシーンがすべてを台無しにしている
★☆☆☆☆
天下人を取り巻く様々な人物にスポットライトを当てた短編集。
石田三成や池田輝政などの有名な人物が主人公のものもあれば、
あまり名の知られていない人物が据えられているものもあり、
戦国ツウでも「おっ」と言えるような嬉しい構成となっている。
が、ほぼすべてのストーリーにベッドシーンが
展開されているのはいくらなんでもくど過ぎる。
歴史小説全般に言えることだが、作者の趣味としか思えないような
官能要素が散見されて非常に低俗な内容に見えてしまい惜しい。
それでもせめて女性関係が物語のキモになるのであればいいのだが、
本作に収録されているベッドシーンのほとんどは「おまけ」に過ぎず
本筋の展開とはなんら関係ないものばかりで
ストーリーを彩る添え物どころか、逆に作品の味を悪くしている。
ベッドシーンを挟むことにより、テンポが明らかに悪くなっているのだ。
おまけに女のほとんどは作者創作のゆきずりの女や愛人で、
ほとんど同じようなタイプ(好色で豊満で色香に溢れている)ばかり。
これではどの小説も同じに見えてしまうどころか
毎回毎回女にうつつをぬかす主人公たちがバカに見えてしまう。
歴史小説には官能要素がなければ嫌だという層もいるのかもしれないが、
10編以上ある小説ほぼすべてにこんな要素があればさすがに食傷する。
本筋はそれなりに面白いのにもったいない。
戦国好きにはおすすめ
★★★★★
戦国が好きな人たちのために書かれたような短編集。
秀吉の下に集まった、さまざまな才能や野望を持った個性たっぷりの人物を一編づつ描く。
蒲生氏郷、池田輝政、石田三成などメジャーな武将も多いが、かなりの戦国通でも知らないようなマイナーな武将も多く登場する。
全ての人物が夢や野望、哲学を持っていて、歴史的にはマイナーであったとしても、彼らの姿は眩しいばかり。
特に最後の「老将」はこの短編集を締めくくるにふさわしい、本物の武士(もののふ)の心を垣間見ることができる秀作で、感動します。この「老将」を短編集の最後に持って来たところがなんとも憎い。
戦国好きの人には、とにかく何も言わず読んで欲しいと思います。
秀作です
★★★★★
短編集だが、どれも秀逸。あっという間に読み通してしまった。久しぶり
に文句無しに賛辞を贈れる歴史小説を読んだ。この火坂雅志という著者
の作ははじめて読んだが、他の作も読んでみたいと思わせるほど。(後に
『全宗』を読んだが、やはり面白かった。)登場人物にマイナーな人物が多
いので、戦国好きの人には絶対お勧め。