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超訳『資本論』 (祥伝社新書 111)

価格: ¥882
カテゴリ: 新書
ブランド: 祥伝社
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マルクスファンになりたい人のための入門書 ★☆☆☆☆
著者が、マルクスの「資本論」を初学者に分かりやすく解説したいと
いう率直な思いを抱いていることに関してはポジティブな印象を持ちます。

しかしながら、使い古された「超○○...」というような形式の題名にも
かかわらず、なぜあえて今マルクスの「資本論」なのか?という多くの一般読者が持つ
であろう根本的な疑問へ回答するための十分な問題設定はなされておらず、回答もなさ
れているとは思えません。

また、一定の知的バックグラウンドを持った若者が、そもそも商品経済とは何なのか?
という素朴な疑問を解消する手助けになる内容も、残念ながら十分に備えているとは
思えません。

とにかく「資本論」を一緒に読みましょう、というのが前提のようですが、それだけの
時間とエネルギーを費そうという人は、すでにマルクスファンなのではないでしょうか。

マルクスのことばに沿って、当時の背景をふまえて解説を加え、時折、現代流の
たとえ話で補足するというのが著者のスタイルであり、著作になるプロセスで
若年層とのメールのやりとりなどがあったとのことですが、その事が、一般の読者
に受け入れられる要件をなすかどうかは判断のわかれるところでしょう。

大学に入ったから、少し難しいことを齧ってみたい、現代批判の
ための視座をマルクス「資本論」経由で得たい、あるいは、19世紀の経済史をあえて
マルクス経由で勉強したい、というようなある意味で少し歪んだ知的好奇心を持つ
若年層を対象にしている書物という印象が強く残りました。

ただそのような若年層が対象と仮定したとしても、「資本論」だけでなくマルクスの
思想そのものに対して、よほど事前期待が高い読者でない限り、この第一巻、
さらに二巻目、三巻目と著者の解説につきあうのは困難でしょう。

「資本論」講義 ★★★☆☆
 90年代、冷戦終結とIT化によるグローバル化は世界市場を生み出し、経済は活性化し多くの人が幸せになる…というリクツがあった。もちろん途上国で多くの雇用創出は生み出され、中流階級が拡大したのも事実。一方で先進国の労働者は職を奪われ、貧困が固定化する現象が起こっている。これは、産業革命で機械化が進むと人間は機械を管理して遊ぶだけでよくなる…というリクツに通ずる。(IT化が進んだときにも同じだが)

 時代は変わろうが最底辺の労働者は苦役を強いられる。あるいは職を奪われる。そこでこのところ共産党が支持者を拡大したり、「蟹工船」(文学としては特に面白いものではない)が読まれたり、マルクスが再び脚光を浴びたりしている。(学生運動は盛り上がっていないようだが)

 さて超有名な「資本論」だが膨大な量と難解な文章で挫折した人も多いだろう。本書は資本論の要諦を抜粋し、解説をくわえたもの。大学教養課程の講義のようなものと思えばいいだろう。教養として「資本論」を読んでみたいが忙しい、という社会人にはちょうどよい。

 著者はかなりうまく噛み砕いて説明していると思うが、やはり地の文(「資本論」)は読んでもよくわからない…ついつい著者の解説文だけですまそうとしてしまうが、それでもまぁ読まないよりはいいかもしれない。

 ワタシの頭には青木雄二「ゼニと資本論」くらいがわかりやすい(笑)。マルクスは、まずは「共産党宣言」から挑戦してみるか。
古典へのすばらしいガイド ★★★★★
資本論は19世紀に当時の先進国イギリスを対象に書かれた経済学の本です。
著者のマルクスは、この本で、資本主義経済システムを、はじめて科学的に規定し
ました。
現在、書かれた時代より1世紀半経過しています。システムのデザインは、高度化
しましたが、その本質規定は、不変のままです。

さて原著『資本論』は厚めの文庫で3冊ほどにはなる大著ですが、本書はこれを300
ページの新書に要訳したものです。原著を大学生がゼミで読むのは、有益ですが、一人
で読むのは、なかなか大変だと思います。古典はそういうものですね。

本書は、レイアウトがゆったりしていて、文章もこなれた読みやすいものになってい
て、解説も不変資本や、生産的労働のところなどを読む限り、正しいように思います。

通学の途中で、電車の中で読むとか、寝る前にページをめくるとか、気軽に読めて、そ
して、資本論の基礎理論が理解できる本なので、1年生や、またシニアの読み物に
適当だとおもいます。
超訳資本主義 ★★★☆☆
最近、「蟹工船」が読まれるようになったり、「資本論」の解説本が出版されたりするのは、不況による社会不安の表れであろうか?
この「超訳『資本論』」は新書版であるが、あの難解かつ大ボリュームの「資本論」を手軽に理解できたような気にさせてくれる手頃な解説書である。
資本論を理解するには、「労働力商品の二重性」という理論的基礎を理解しなければならない。そのための前提となるのが、「商品の二重性」である。
商品の二要素は使用価値と交換価値である。使用価値とは具体的に有用な価値であるが、本質的価値ではない。商品の本質的価値は交換価値にあり、ある使用価値(商品)がほかの使用価値(商品)と交換される比率としての量であらわされる。そしてその量は人間労働の量、すなわち労働時間で測られる。商品の根源を問えば、それを作った人間の労働しか残らないのである。
マルクスの最大の発見である「労働力商品の二重性」とは「使用価値をつくる労働」と「価値をつくる労働」である。「使用価値をつくる労働」とは自然にあるものを加工することであり、その意味で、労働は富の唯一の源泉ではない。もっとも重要な源泉は土地である自然である。しかし、商品生産社会の労働は、商品を交換するための「価値をつくる労働」である。商品生産社会で重要なことは、有用な労働をしているかどうかではなく、価値を生む労働をしているかどうかということである。そして、その労働で問われるのは質ではなく量である。
それでは、どこから資本が生まれるのか?それは資本の価値増殖過程にすべての謎が隠されている。
最初に貸し付けられた価値は、流通する中でその価値を維持するだけでなく、その価値を大きくし、剰余価値をつけ加える。つまり価値増殖するのである。そしてこの運動が資本に転化するのである。
しかし、高利貸資本や商業資本を除き資本は流通からは生まれない。そこで「本源的蓄積」という重要な問題が登場する。資本が商品を買い、利益を上げて自己増殖する過程で買う商品とは労働力商品のことである。労働者が労働した再生産のために支払われる労働力の価値と、彼が労働した全労働過程の価値とは違うわけで、この差額を得ることが資本家にとって利益となるわけである。即ち、労働力の使用価値と交換価値の相違から利益はうまれ、それが新たな資本として蓄積するのである。
そしてマルクスは、価値を形成するものは労働のみであって、機械も原料も一切価値を形成しない。だからこうした部分は、価値を変化させないという意味において「不変資本」といい、価値を付加し、増殖させる労働に対して「可変資本」と言っている。
こうしてマルクスは、労働者の可変資本の部分について、労働の再生産にかかる必要な費用ということで「必要労働」と表現し、それを超えて新しい価値を形成する部分、剰余労働に支出される時間を「剰余労働時間」と名付けている。いろいろな経済の社会形態、たとえば奴隷制社会から、賃労働の社会を区別するものこそ、この剰余労働こそが、直接的生産者や労働者から搾取される形態である。
ここまで理解できれば、この本買った価値あり。
資本論入門編−現代版 ★★★★☆
 ワーキングプア、派遣切り、上がらぬ給料、生活保護費切り下げ…。
これは資本主義の本来の姿らしい。なぜか?

 いかんせん原文の翻訳である以上、超訳とはいえ用語は難解でわかりづらいが、マルクス自身がジャーナリストであったため事例は的確で、シニカルな言い回しは現代でも通じる。

 現代に通じる事例
1.19世紀からあった過労
 鉄道事故で数百人の死者。鉄道労働者の怠慢が原因。勤務時間が休みなく40〜50時間に及んだことが原因。
 
2.教育が生む格差
 ブルジョアは高等教育、プロレタリアは職場教育。

3.貧困は神の定め
 タウンゼント曰く、救貧法はこの摂理に反する、と。
 そして、経済成長著しい当時のロンドンでも貧困の実態は不明。この時代も貧困は見えなかった。
 
4.労賃の下落は労働者相互の競争から生じる
   
 資本主義社会に生きざるを得ない私たちはその本質を理解しなくてはなるまい。なぜ努力しても資本家になれないか、労賃はなぜ抑えられるのか、労働時間はなぜ長いのか(一日8時間に収束していくのは興味深い)。
「労働力が商品となって初めて資本主義が誕生し、資本の剰余価値は不払いの労働時間であり、搾取である。」
 そして、
「資本主義的生産過程の機構そのものによって訓練され、阻止腐れる労働者階級の抵抗も増大し、資本主義の枠と調和しなくなった時に資本主義的私有は最後を告げる」
 つまり社会的所有の中で個人的所有が復活する。私たちが搾取する側から収奪する側にまわる。

 マルクスのこの希望的観測をどう解釈していいかわからないが、現代の閉塞感の中で、なぜと投げかける問いには答えてくれる。
 どうすればの問いかけには「資本論」を超える次の哲学を待ち望むしかない。

 超訳を読んでわかった気になる人間が増え、文化の低迷を憂える向きもあるようだが、その程度の理解で十分であろうと思う。原文を読むならいざしらず、翻訳を読んでなんとなく理解するのと五十歩百歩の違いであろう。入門編としてお勧めしたい1冊である。