たとえ成功を手にしても、現状に満足できなかったり、地位を失うことを恐れたり、燃え尽きたり、家族や健康を犠牲にしたりと、むしろ不幸の種をまいてしまっているというケースはめずらしくないだろう。本書は、成功の裏側にあるそんな実態に目を向けたもので、安易な成功本のブームに一石を投じる内容である。
著者はみずからのコンサルタント経験を交えながら、米国で成功者と目されているビジネスパーソンの事例を多数集め、じつは彼らがさまざまな代償に苦しんでいることを浮き彫りにする。そこには、成功したまさにその理由によって失敗する「成功のパラドクス」があるというのだ。ここに孤独や葛藤などのリーダーにつきものの不安定な内面が、じつによく描き出されている。
しかし、だからといって著者は、成功よりもっと別のなにかを追い求めよというのではない。本書で説くのは、「成功のパラドクス」を克服して、より長期的な成功を手にする方法である。具体的には、自分では隠そうとしているパーソナリティーであり、人生を大きく脅かすという「シャドウ」を観察し、それを活用し、人生を見つめ直す作業を指南する。ベースには心理学を置いているが、「棚卸し」「捨てる」「充電」「儀式」「自己のメンテナンス」などの馴染みのあるキーワードで自己変革や再生を支援してくれる。
成功と人生をめぐる著者の実践的な哲学と人物事例の検証は、非常に読みごたえがある。なかでも壁にぶつかった状態からの再生の視点や「組織のシャドウ」などのリーダー論にはヒントが多い。より確かな成功をつかみたい人や、メンタル面の危機管理をしたいリーダーなどは必読といえよう。(棚上 勉)
The PARADOX of SUCCESS
★★★★★
ありそうであまりないテーマ、ですがビジネスマンにとっては重要な課題のひとつでもある。
成功がどのようなものを指すかは人それぞれですが、一般的な意味での富、権力、名声、賞賛など求め、エクセレントを追求した結果が気がつけばオフィスの囚人になっているのでは・・?まさに現代病といってもよい当人にとってはとても切実な問題であります。
本書ではそうした影の部分をシャドウと位置づけ、その存在と出現するタイミングやパターン、その距離感、対処法、などなど様々な角度からいままで目をついつぶりがちだったシャドウというものに文字通り光を当てていく。
言い方を変えると一時的・短期的成功から罠にはまることなく、持続的な成功ができるように目を背けることなくシャドウにも向き合っていきましょうというところでしょうか。
持続の要素に著者は「倫理と美」という尺度を提示してますが、これは通常ビジネスの世界(数字の世界、合理主義)でなかなか表立って評価の対象とはならないものであり、それがゆえについ見落としがちな点である。
いろいろなシャドウが出てきますがまとめると概略がおぼろげながらつかめてきます、個々人にとってはとっても個人的なことに思えることが実はある種のパターンであることに気づけることも本書の利点の一つです。
以下本書の中にある引用です、
「エクセレントであることの代償とは、家族との休暇をあきらめることであり、息子が所属するリトルリーグの試合に行かないことであり、家族の誕生日パーティーに出ないことであり、夕食や週末のランチを共にしないことであり、ガーデニングや読書、映画といった娯楽をあきらめることである。」
2003年に刊行された当初に読んだのですがいまだに鮮明に残っているメッセージであり課題のひとつでもあります、本当の意味での成功とはなにかを考えさせられます。
本書を読んで何かが変わるわけではありませんが、あとで「こんなはずじゃなかったんだがな」という結果に一石投じてくれるでしょう。
「成功による不幸」をを予防する心理学。「成功」は必ずしも「幸せ」を意味しない。
★★★★☆
成功による不幸を回避するための本。
ありそうな本だけど、あまりお目にかからないタイプの本。
どのように「成功」するのかに焦点を当てた本というのは、
あまた出版されているけど、「成功による不幸」を避ける視点の本というのは、
あまりみたことがない。
あったとしても、「こんな不幸はいやだ」程度の事実の提示の域を超えないものが多いと思う。
「成功」と「幸福」の間の負の相関関係について説いている本。
「成功」という光には、それに反するダークサイドがあるということ。
そのダークサイドをどのようにコントロールするのか。
「成功」しているとはどういう状態か?
「幸福」とはどういう状態か?
「成功」はしていても、その対価として様々な犠牲を余儀なくされる。
「成功」しているが「幸福」ではない人の具体例を多数例示し、
「成功度」と「幸福度」を適切なレベルでモニターして、
有意義な人生を送るための心理学アプローチを紹介している。
特に「人生の棚卸し」というキーワードは非常に面白い。
「〜しなければ、幸せになれない」という強迫性〜抜けられない人。
仕事に対してあまりにも幸福になって様々な犠牲を、
対価として支払うことを余儀なくされる多忙な人。
成功のために犠牲にするに値するものと値しないものを、
ふるいにかけて、自分にとって適切なものを搾取するための、
ヒントになる本だと思う。
成功とその背後にあるシャドー(陰)
★★★★★
すべての「成功」を追い求める者が読むべきだと思いました。
人生の成功と、その背後にあるシャドーの存在
を明確に教えてくれる素晴らしい本だと思います。
唸る一冊
★★★★★
成功しながらも、やがてとんでもない失敗や事件事故を引き起こす事例を時々見ます。
裕福な人などが事件を引き起こし、新聞雑誌をも賑わすときもあります。
本書は、成功者の中には、人には言えない闇の部分を抱えていて、それが次第に醸成
されて取り返しのつかないカタストロフィーへと招く心理メカニズムを著しています。
成功者は光の部分がクローズアップされがちでですが、光と対極する闇の部分も実は
抱え込んでいる場合があるといいます。
本書は、一時に成功するも、次第に歪み出して失敗という奈落の底に落ちてしまう
起業家の闇の内面性に鋭く迫った、ユング心理学がベースとなった、起業家の心理学本です。
起業を考えている方は、読まれるのがいいと思います。
大切なことは慢心に陥らないために、成功を定義し続けること。
★★★★★
本書は比較的日本人の感性にフィットしやすいのではないかと思いますが、著者が
言い続けていることは、大切なことは、とにかくひと時の成功に慢心せず、そのままの
スピードで走り続けないこと、そこで自分が目指していること(成功)を定義しなおし、
自分の内面の欲求を見つめ直す必要がある、ということに尽きると思います。
そのためには定期的に仕事を離れて、自己を俯瞰し、省みるという状況を設定することが
必要となってくるといいます。現代のビジネスマンは多忙を極めており、仕事を
頭から追い出す時間も取れず、そのようなことができない、という人も多いとは思いますが、
それでも私は本書のアプローチは成功の途上にある人は勿論のこと、行き詰まりを
感じている人などにとっても有効であると考えています。
一度本書を手に取り、自己を見つめなおす切欠を掴んでいただきたいと思います。