珍品だけど、なんとなく憎めない娯楽作です。
★★★★☆
時代劇の大スター、片岡千恵蔵主演の往年のヒット作〈多羅尾伴内〉シリーズの記念すべき第一弾です。
昭和21年といえば、太平洋戦争で無条件降伏した日本が、まだ進駐軍の占領下にあって、いわゆるチャンバラ禁止令のために時代劇が規制を受けていた時代。大映京都でも、こういった通俗活劇を撮らざるをえなかったというわけですね。
洋装の片岡千恵蔵は、顔のでっかいジャン・ギャバンみたいに見えたかなあ。なんと、剣劇のかわりに銃の撃ちあいを見せてくれます。手品だって披露しています。
当時の日本を舞台にして、和製アルセーヌ・ルパンのような怪盗藤村大造こと名探偵多羅尾伴内が、得意の変装術と推理を駆使して活躍する物語。
ところが、役者さんたちも製作スタッフも時代劇畑の人たちばかりだから、独特なセリフまわしと身のこなしに、なんともふしぎな違和感が目立つのが微笑ましい。脚本といい、展開といい、演出のディテールは粗だらけで、ツッコミどころ満載の珍品といえるかもしれません。
たぶん万人向けではないでしょうが、好みが合えば楽しめるのでは。資料としての価値もありそう。
画質は、この手の廉価版にしては良好な部類。おそらく、かつて発売されていたVHS版とおなじ内容ではないかしら。メニュー画面はないけれど、いちおう15分おきにチャプターが切ってあるようです。