エコノミック・アニマルの自虐
★★★☆☆
バブルと共に現れバブルと共に去っていった一色伸幸脚本のメディアミックス作品(同時にビックコミックも掲載された)を滝田洋二郎が監督している。この映画が作られたのは1993年だから、バブルがはじけて日本が暗中模索していた時代。建設会社に勤める主人公の高橋(真田広之)も、その頃には六本木に毎晩通いチャラついたリーマン生活を送っていたのだろう。バブルの頃の癖がいまだに抜けきらず、同僚のOL(早見優)とお気楽な社内恋愛を楽しんだりしている。そんな主人公が、クーデターを繰り返す東南アジアの架空の小国タルキスタンに代役で出張を命じられる。カルチャーショックも何のその、ライバル会社との入札にもあっさり負けてさあ帰国という段に新たなクーデターが勃発。高橋らジャパニーズ・ビジネスメンは紛争を逃れて密林へと迷い込む。
この逃げ遅れたサラリーマンを、バブルに取り残された一色と重ねて見ると結構楽しめる。生きるのに必死な現地人に対し、あからさまに軽蔑した態度をとる建設会社関係者(真田広之、山崎勉、岸辺一徳)をえげつなく描いたところに、自虐的な空気を感じたのは自分だけだろうか。金融クラッシュで息も絶え絶えのアメリカが自虐的パニックムービーを連発していたのとどこか似ているのだ。反乱軍の捕虜となった中井戸(山崎勉)を救出すべく高橋がゲリラ大尉にむかって熱弁をふるうシーンが、おそらく本作品のクライマックスであろう。「エコノミック・アニマルで悪いか。それが日本人なんだよ」と開き直る高橋の姿を白い目で見つめる兵士たちの表情がとても印象的だ。
しかし、(善悪はともかく)仮にも国家存続ために命をかけて戦っている相手に、「お前らが遊んでいる間に、オレたちは必死に働いてたんだ」という言葉を高橋に吐かせる脚本に<自虐>ではすまされないズレを感じてしまったのも事実。バブル景気を必死で働いたご褒美かなんかと勘違いしている感覚の緩さが、この映画の後味をとても悪くしているのだ。ホイチョイ・プロダクションが最近作った『バブルへGo!』でも覚えた違和感を、本作品にも感じる人はきっと多いことだろう。<せこせこ働くだけが能の日本人>などとバブル野郎に言われたくないわ、というのが本音なのである。
傑作です
★★★★★
アジア・中東・アフリカ等、発展途上国の担当者、赴任経験者は必見。
驚くほど良く我等ジャパニーズ・ビジネスマンの心情と悲哀をコミカルにまたシニカルに表現している。それでいて痛快。
普通の人は、「面白いけど、ちょっと荒唐無稽で大袈裟じゃない?」との感想を抱くかもしれない。
でも現地を這いずり回った経験のあるビジネスマンであれば、この作者がどれだけ綿密な下調べをしてこの作品を作り上げたかが良くわかるはず。
山崎努、岸部一徳の放つ何気ない言葉の重みにはドキッとすらする。現地の俳優もいい味をだしている。
おじさんたちには涙注意報発令かも。
なかなか面白い
★★★★★
原作は一色伸幸さん、かなり昔にビッグ・コミックに連載されていました。
映画化は難しいと思われていたというか、誰も映像化しないだろうと思っていたら、
やっちゃいましたね。
主演は「亡国のイージス」や「ラスト・サムライ」でシリアスな演技を見せた真田広之が、
コメディに熱演しています。
共演は、それぞれに癖というか個性の強い俳優陣が勢揃いして、
海外への日本人ビジネスや政情不安な部分など見事に描いています。
実際に海外でビジネスを経験された方は、笑うに笑えないシーンもあり、
少し複雑な気持ちになりながらも「自分ではなく映画の世界」なので
安心して見ていられます。
日本映画もなかなか面白い、やるじゃないかと感じさせてくれる一品です。
なにも得られない映画。
★★★★☆
最近は純愛ブームらしいが、そもそもブームというものに意味など無いはずで、人は個人それぞれが好きなものを好めばいい。
閑話休題。
最初から最後まで飽きさせないこの映画。バブルに日本人が踊り狂っていた頃、日本人が海外でどんなことをしていたかわかる映画でもある。時代に閉塞感を抱いている今とは違う空虚な自信を抱いている日本人。逆に言えば「純愛」などにすがらなくても生きていけた強い時代が映し出されている。
この映画にはギャグと、事実のみが映し出されていて、薄っぺらい理想など存在しない。