頭がついて行かなかった
★★☆☆☆
人が出たり入ったり、映画にしたらおもしろかったかもしれない。
でも活字で読んでいるだけだと、頭が追いついて行きませんでした。
何時何分に誰がどうしたと言われても、右から左に抜けてしまうタイプなので……。
数字に強く、ロジカルなトリックに興味のある方が読めば、もっと楽しめるのだと思います。
個人的には、もうちょっとメロドラマ風味がほしかったなあ。
人物描写のコクももう一つ。
謎解きの面白さ
★★★★☆
ほのぼのムードかと思いきや、しっかりとした本格物です。
いくつもの重層的な謎が、ラストに向かうにつれて順番に収束していく展開は、まさにパズルのピースが一つずつ収まっていく姿を鮮やかに見せていて、謎解きの面白さを堪能できること請け合いです。
一方、物語としは、一癖ありげに登場した人物のキャラクターが十分に生かされていない点も多く、もったいぶっていた割りには、ほとんど個性が感じられません。もし、謎解きの面白さよりも、個性的なキャラクターがワイワイと騒ぐ面白さを楽しみたいのであれば、ウォルター サタスウェイト著の「名探偵登場」や「仮面舞踏会」をお勧めします。
ファンタスティック・ミステリの傑作
★★★★★
1975年に発表されたものだが、ミステリの黄金時代を彷彿とさせる作品。没落した貴族の唯一の生き残りのヒロインが親友で伯爵の娘の屋敷を訪ねる所から物語が始まる。逆境にめげない勝気なヒロインの明るさと聡明さとが物語に一本筋を通している。
時代はヒトラーの台頭期。舞台は伯爵の荘園屋敷、荘園に行く始発駅が「パディントン」、ヒロインの亡妹がヒッチコックの映画に出たという設定など遊び心満載である。ヨーロッパの架空の公国とイギリスとが国防と資源を巡って上述の荘園で交渉するという背景の下、物語は進行する。荘園に集まる人物も多彩。公国とイギリスの官吏の他、アメリカの銃マニアの大金持ち夫妻、遊び人の貴族、自称荘園屋敷ライター、屋敷の主の伯爵も銃マニア、突然飛び込んで来た美貌の自称フランスの男爵夫人、そしてイギリス官吏(伯爵の弟)はヒロインの憧れの的。この中に両国の交渉の様子を探るスパイが潜んでいる。そして、伯爵の弟と男爵夫人はかつての婚約者。"生霊"なる盗賊が宝石を狙っているという噂も入る。こうした状況と人物紹介を兼ねる形で、物語りは長閑に進む。そして突然嵐の晩に、公国の高官の銃殺事件、貴重な銃と宝石の盗難事件、男爵夫人の失踪事件が重なって起きる。そして銃殺現場の庭には血染めのエッグ・コージィ(卵覆い)が...。ポワロを引用する風采の上がらぬ警部が登場するに及んで、登場人物の真の姿が次々と明らかになり、謎は増々錯綜して行く。パズラーとしての出来も良いのだ。小刻みなドンデン返しの連続の最後に待っている意外な犯人と奇想天外な大トリック。
ドロドロとした陰惨な事件の筈なのに、翳が微塵も無く牧歌的で無条件に楽しめる。外見とは異なり鋭い頭脳の警部、銃の自慢合戦をする伯爵と金持ちなど人物造詣も巧みで、しかも、それらが物語の中で活かされている。ユーモアとアイデアに富んだファンタスティック・ミステリの傑作。
必読です!
★★★★★
あの「血のついたエッグ・コージイ」が「血染めのエッグ・コージイ事件」として、ついに復刊されました。
舞台は30年代のイギリスのカントリーハウス。そこにやって来たのはアメリカの富豪夫妻、貴族の娘、男爵夫人、外交官等多彩な顔ぶれ。
そして嵐の夜に殺人事件が!と、それだけでも堪らないのですが、更にはスパイや宝石泥棒まで絡んできます。
それぞれに思惑があり怪しげで、一体誰が殺人犯で誰が泥棒なのか?スパイは?最後まで遊び心いっぱいの傑作です。味のある探偵役もいいですね。
文春文庫版では幻に終わっていた、続編も出るそうなのですごく楽しみです。