今回のアレンジはどれも新鮮だが、原曲の香りを大切にしている。「戦場のピアニスト」で知られるショパンのノクターン20番はまるで最初からヴァイオリンのために書かれたような気がするほど、目まぐるしく移り変わる明暗を表現しつくしている。
ベルの演奏は端正だ。切なく弦をいっぱいに鳴らすときも、高らかに歌い上げるときも、いつもいつも。美人はどんな表情をしていても美人である、それがベルの演奏だと思う。どれも有名な曲ばかりだが高音部の響きとフレーズの仕舞い方一つで、ベルの演奏だと分かる個性のきらめきがある。