格調高い品の良さを醸しながら未亡人2人の心情を可愛らしく描いた秀作
★★★★★
いやぁ、弓月作品が久々にかっ飛ばした場外ホームランではなかろうか。2人のヒロインがメインとサブに分かれるのは過去にもあった定番構成。進行も概ね同じである。夫(兄)を失ったばかりの妻と義弟(主人公)に隣の未亡人だけというシンプルな設定で、亡夫への想いを残しながらも深まっていく義弟(隣の少年)への気持ち、図らずも主人公を取り合う形となってからの微かに生じる嫉妬と敵愾心、こうした心情を過度に噴出させることなくしっとり細やかに表現している。冒頭の『お高くとまった女と思うかもしれない』から、主人公だけが知っている『笑顔になると一転、親しみやすい性格が露わになる。それに意外におっちょこちょい……』という兄嫁の描写が後に結構効いてくる。34歳という設定なのだが、これがまた主人公の前では実に可愛らしくなってしまうのである。また、隣の未亡人(29歳)がこれと好対照な積極さを見せる人物で、情交においても終始リードする姉御肌の持ち主なのだが、これも主人公が経験を積んだ終盤では時折形勢逆転されて追い込まれる可愛らしさを見せてくれる。この2人(兄嫁は隣の未亡人との逢瀬を目撃してから)の愛情が実に好ましく吐露されている。また、弓月作品に特有の、粘着質な音の描写をセリフで表すのは健在ながら、全体的に格調の高さというか品の良さが感じられるのも良い。結末の数行などは官能小説らしからぬ爽やかな文章で兄嫁の心情を表現している。
お口奉仕にパイズリ、手淫、そして合体とフルコースで綴られる官能描写においては、本作の全編に渡って粘っこくていやらしい表現が目白押し。兄嫁と隣りの未亡人とが交互にほぼ半分ずつ描かれているのもナイス。男女の想いをぶつけ合いながら心と体を高めていく描写の連続を存分に堪能することができる。合体前の戯れでさえも充分にいやらしく、読み手を興奮の際に追い詰める秀逸な作品である。