基本的な内容だが面白い。
★★★★★
本書はアメリカの建国の祖「ワシントン」、中興の祖「リンカーン」、アメリカの経済発展の基礎たる自動車産業の祖「フォード」を扱い、別章に中国、インドの苦難を描いている。
もっとも本書から歴史の中軸として浮かび上がるのはスペイン、ポルトガル、オランダの没落とともに浮上した当時の大英帝国、つまりイギリスである。
イギリスの「三角貿易」という発想は当時では革新的だったに違いない。なにしろストレートにインドから土地を略奪することはしない。少しずつ侵食するわけだ。いや用語としては侵略だが侵食のほうがニュアンスが伝わると思う。また、中国ともはじめは仲良くしていて、麻薬を売りつけて戦争を引き起こす。これはもはや犯罪国家である。今でもそういう国が日本の隣国にはあるようだが、それをステータスで取り繕うのはイギリスにしかできまい。
それに比べるとイギリスから独立して巨大な国家となったアメリカなのだが、「フォード」の理念のように、安く車を作り、安く売って、すべての人に豊かさを享受させようとする。
ワシントン、リンカーンも権力やステータスなど階級社会にみられる固定した状態を、開放・解放してゆく。それが建前というかアメリカの価値観、哲学、原動力なのだろう。そういう庶民のために何かしようという国がほとんどない時代にアメリカは出現したというところがすばらしく、そこからあたらたな時代の流れができるのを見ると、時代にこめられた民衆の希望というものだろうか、漫画でも感じられて、いいものである。なにか若々しく感じるのである。
そう考えると、戦後の<資源貧乏>日本の自動車産業戦略は若々しいアメリカの続編なのかもしれない。そうなると今後インドのタタは侮れないだろうなどなどと、考えさせられるものである。