子供から大人まで手軽に読める世界史漫画
★★★★☆
教科書が面白くて歴史好きになった、という大人はほとんどいないだろう。学習指導要領とやらでがんじがらめの教科書には、歴史を面白くする上で大切な、物語性というものが欠けているからだ。多くの大人が歴史小説を通じて歴史好きになっているのは十分な理由がある。
しかし、歴史小説は一つの時代や人物に焦点を当てるもので、世界史の大きな流れをざっとつかむのには適していない。勉強する気さえあれば、十巻、二十巻におよぶ優れた一般向けの歴史書もいくつも出ているが、読破するにはそれなりの時間と忍耐がいる。だから、学校で歴史が嫌いになった人はもちろん、歴史の好きな人でも、世界史の大きな流れについての基礎知識という点では、意外と抜けている場合が多いのではないか。
その意味で漫画、しかも文庫版という手軽な形で世界史の大雑把な流れをつかむことができるこのシリーズは価値が高い。こんなに簡単に読めるようになってなお、世界史の「せ」の字も知らないのではもったいない。今勉強中の中高生はもちろん、復習したい大学生や大人も、漫画とバカにせずぜひ手にとって読むべきだろう。その気になれば一日で10巻全部通読できる。
この第8巻では19世紀後半から1920年代にいたるヨーロッパ史と植民地主義が主に扱われているほか、日清・日露戦争辺りの経緯もごく簡単に扱われている。
歴史の解釈としては中学高校で習ったことをそのまま再現したような感じだし、架空の人物を登場させる手法が漫画チックになり過ぎている個所もあり、内容にケチをつけたい個所もないではないが、この時期の歴史の基本をおさらいする役割は十分に果たしている。今日あまり評判のいいとは言えないビスマルクが、力を信奉しつつ現実を見失わなかった政治家としてきちんと描かれているのが私には印象に残った。