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柳宗理 エッセイ

価格: ¥2,520
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平凡社
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   柳宗理の名は、日ごろあまりデザインに馴染みのない読者にも広く知られているだろう。テーブルウェアのような小物から、歩道橋や自動車、オリンピックの聖火台のような大掛かりなものに至るまでその活動の幅は広く、それらの作品のなかには「バタフライ・スツール」のように海外でも広く知られているものも少なくない。しかし、作品の高い知名度と比べてみても、柳その人が語ったデザイン観は不思議とあまり話題に上らなかった。88歳を迎えた著者・柳が初めて刊行したエッセイ選集である本書は、日本のプロダクトデザインをリードしてきた重鎮の軌跡が軽妙な言葉によってつづられた、今までの遺漏を埋め合わせて余りある1冊となっている。

   本書には折に触れ書き留められた多くのデザイン論が収録されているが、なかでも著者のデザイン観が最も凝集されているのが冒頭の「アノニマス・デザイン」であろう。著者は匿名の職人によって作られたジーパン、野球のボール、ピッケルなどに「その土地土地の生活の用に準じて、忠実に素直に作られている健康で平穏な美しさ」を見出してそれを「濁流渦巻く現代文化への清涼剤」として位置付けている。この部分だけを読んでいても拍子抜けしてしまいそうだが、しかしこの視点は伝統的な「用即美」の境地とほぼ同一のものといってよく、シンプルにして質実剛健なデザインこそ著者の希求するものであったことを他の多くのデザイン論や雑感からも読み取ることは難しくない。

   言うまでもなく、このような「アノニマス・デザイン」へのまなざしは民藝運動を展開した美学者である著者の実父・宗悦の大きな影響下に形成されたものであり、本書の後半にも、宗悦が創設した日本民藝館の館長を務める立場となった今、あらためて実感されるその業績の偉大さを回顧する断章が挿入されている。親子2代にわたって受け継がれた民藝運動の理念を「蛙の子は蛙」と言って済ますのは安直に過ぎるというほかない。(暮沢剛巳)

モノへの美意識をあきらめなくてもいいのかもしれないと思わせてくれます ★★★★★
物が豊かには決してなっていないことは頭の悪い自称学者たちや管理職の人間意外誰でも知っている。私たちは物の質が悪すぎるということを知りすぎて麻痺してどこかあきらめている。あきらめなくてもいいのかもしれないと思わせてくれ言いたいことを言ってくれるセンスの良さに触れられる。

3次元の物は3次元で手を動かしてどんどんプロトタイプを作っていくこと。そうやってしか物を作ることはできないと。なぜ他のデザイナーがそれ以外の方法をとるかといえば他人から金を巻き上げて金持ちになるためだけ。そうやって質の悪すぎるものが溢れ、デザイナーはただの金にまみれた悪にしか過ぎないのではないかとまで定義してしまう。デザイナーはいらないとまで思っている。アノニマスで十分ではないのかと。

金儲け企業や金儲けデザイナーに対しての批判はいたるところでというか多く出てくるので本当に柳さんの時代はろくでもない日本人ばかりがいたのだなと思うぐらい良く批判されています。変わる見込みはないですが。

モノをまず日常と非日常に分けて考えるべきだと思っている。つまり、日常と非日常のそれぞれの範囲に明確に分節してモノを見るようにするべきだと思っている。日常の美と非日常の美を分けて考えるべきだと。その分節の仕方を少し行なっていないのではないかという印象は受けました。
普遍のデザイン論 ★★★★☆
柳宗理が、今までに書いたエッセイの集大成と言える本です。
 「マーケット・リサーチなどは、デザインの創作には、役立たない。なぜならマーケット・リサーチは、過去のデータの分析だからである。それに反してデザインの本来の使命は、過去に未だかつてない優れたものを生み出すことにあるからである。」という1983年に書かれたデザイン論などは未だに古びていない確かなものです。
 
丁寧な感じがする! ★★★☆☆
美しいと思う感覚は日常的なものの中に埋もれてしまっていることに気付かされます。世界に通用するデザイナーが、私達とそう遠くない価値観からスタートしていることに喜べる一冊だと思います。
本質をつかんでいくプロセス ★★★★☆
柳宗理のデザインに惹かれるのはそこに本質を感じるからなのだと思う。

本質をつかんでいくプロセスが「デザイン」なのかも。。ということは柳のプロトタイプ制作に始まるデザインプロセスに見て取れる。

本質をつかむにはその膨大なインプットを必要とするしそのための好奇心も必要。なによりもそれを続けることのできる柳はまさに本質を追究し続ける人なのだと感じる。

日本の民芸館を旅するごとに訪れてみるが、いつもそこで出会うのは国籍に囚われない視点と無駄のない美しさと暖かみを感じながらも厳しい静寂のある風景。そこには生と死の両極端とその間にある緊張感が見て取れる。

本質を追究する人は哲学者でもある。つねに問いを立てるから探求心がつきない。そんな気持ちの状態で活きているから、それは当然文章(エッセイ)になって現れる。

そんな「デザイン」活動の一片に触れることができてとても嬉しく思いました。

物を作るのが好きな人に幅広くお勧めします。 ★★★★★
日本を代表するデザイナーの1人、柳宗理。
氏の物作りに対する姿勢が、読みやすい文章で語られています。
人・国・文化・その時代に対する愛情が感じられ、
明確に好き・嫌いを発言されているのも、読んでいて好感がもてました。
身の回りにある製品を見て「良いものとは?」と、考えさせられます。

デザイナーといわず、物を作るのが好きな人に幅広くお勧めします。