“体当たり”だけではないヒロイン…
★★★★☆
段々と、このシリーズも、事件が抱える複雑な背景と“その周辺”を暴き出すスタイルになっている。年齢を重ねたヒロイン、ヴィクの「年齢を重ねていくことへの思い」というようなものが、一人称による文体で語られるが、面白い…
シリーズではお馴染みとなった、ループ地区にあるヴィクの事務所が入ったビルに取り壊しの日が迫っていた。友人や恋人との不仲までも抱えて憂鬱な中、ビルの地下でホームレスの母子と出会う。そんな時、ホームレス救済組織関係者の殺害がヴィクの事務所で発生し、窮地に陥りながら、不法就労者を使って荒稼ぎをする建築業者の不正に挑む…
新領域
★☆☆☆☆
サラ・パレツキーは新しい小説の分野を開拓しつつある。その名も、「男性糾弾小説」。そのうち、女性の登場人物は全員、レイプされるか子供の時に性的虐待を受けるかしていて、男性の登場人物は全員、女性を抑圧したがっている様になるだろう。何を考えているのか分からないが、推理小説のはずだが、不必要に「社会問題」を提起し、これ見よがしに訴えかけ過ぎという気がする。だからどうしろって?と逆に聞き返したくなる。ミステリーとしては相変わらず非常に面白く、止まらなくなる。だが、これは明らかにミステリーとして読者を楽しませることを意図して書かれた本ではない。苦しませるために書いた、という方が正しいかも知れない。
"不惑”にはなれない
★★★☆☆
巻末の解説にもある通り、V.I.シリーズは、主人公ヴィクが疑似家族を形成しながら独立独歩型キャリア女性として様々な社会の軋轢と格闘していく過程を綴った物語でもある。従って、最近の作品になるほど物理的な分厚さが増していき、作者パレッキーは本作で、これでもかという程のエピソードを詰め込んで「事件」以外の謎を読者に投げているように思える。ヴィクは相変わらず八面六臂の大活躍だ。自分の事務所で知人を殺された事件の真相を探り、その娘を気遣い、事務所が入居するビルに忍び込んだ女性ホームレスとその子供達を不幸な家庭環境から救おうと奔走しながら、ときには崩れそうになる自分の人間関係をも修復しようと必死だ。しかし、それに伴う彼女の一連の行動は、殺された妻や子供達をいびつな愡情で支配していた大学教授のそれと似てはいないだろうか。もちろん、彼女自身も友人達の反応に傷ついているが、状況次第で同行させる人間が変わるだけなら、それは家族と呼べるものなのか?ラスト近くでヴィクの恋人でもある刑事が彼女に語る言葉と、最後の暖かな場面を読み終わったとき、難問を解決した後の安定した大団円を見出すのか、不安を抱えた一区切りを感じ取るかによって、このシリーズとの付き合い方は変わるかも知れない。ヴィクが登場しない『ウーマンズ・ケース』や『ゴースト・カントリー』等も読まれると、パレッキーの思考を探るヒントになるかも。
楽しかった!
★★★★★
This book was very exciting, couldn't put it down. V.I. has guts and stands up to anything and everything. This was my first Sara Paretsky book but I'm already hooked.