Kitchen Confidential: Adventures in the Culinary Underbelly
価格: ¥3,674
レストランで食事をする客のほとんどは、表面を焼いたフォアグラの上に極めて優美なそば粉のブリニがトッピングされ、ピカントハクルベリーソースがかけられた銀器にのせられたこの上なく素晴らしい料理は、料理の最高芸術家であり繊細かつ実に洗練されたエグゼクティブ・シェフによって創作されたものにちがいないと信じている。しかし真実はもっと残酷だ。多くの場合、上品な3つ星レストランで料理を作っているのは、決まってピアスの穴を開けているか刺青を入れ、意味不明な雑言や外国語以外にはひとつのセンテンスも話すことができないような「風変わりな変質者や麻薬中毒者、難民、そして酔っ払いやコソ泥、ふしだら女や精神異常者を寄せ集めた凶悪」チームである可能性の方が高いのだ、とアンソニー・ボーデインは本書の中で書いている。20年以上料理の最前線で這いつくばってきた著者が、明らかにサドマゾヒズム的快感をこめながら、迫力に満ちた表現でこの世界を描いている。CIAで訓練を受け、現在は有名なレ・アールのエグゼクティブ・シェフを務めているボーデインは、雑誌「ニューヨーカー」に最初の(そして非常に評判の悪い)エッセイを掲載したあと料理ミステリーを2作出版し、今回、好色で手癖の悪いコックやレストランの真実の姿を率直に告白するという形で本作品を発表した。彼はみだらな言葉を並べながら実に雄弁に語り、弁解など一切なく独断的に、かつ非常に巧みにストーリーを展開させている―― まさにキッチンのジャック・ケルアックだ。この手の無謀な行為がお好みでない人は、冒頭にある著者からの警告に注意すべきである。「ここにはいくつかのホラーストーリーが描かれている。酒、麻薬、乾物置き場での性交、この業界で蔓延している食欲を減退させるような行為の数々。月曜に魚料理を注文しない方がいいのはなぜか、なぜウェルダンを選ぶ人は樽底の削りくずをもらうのか、ブランチにシーフード・フリタータを選ぶのが賢い選択といえないのはなぜか…などについて語っている。しかし、私は自分の目で見てきたこの世界について誤解を与えることだけはしないつもりだ」