日本人にとってのキリスト教とは何か?
★★★★☆
なぜ日本ではキリスト教が流行らないのか?たとえばお隣の韓国では大盛況なのに、こちらでは信者が国民の1パーセントにも満たないのはなぜか?このような疑問を抱きながら、著者が日本のキリスト教受容をめぐる諸問題について考え発言した論文・講演の記録などを集めたのが本書である。著者は神学者なので、すばらしい教説をどうすれば広めていけるか、という課題を常に意識している。だから、というか、「中立」的な人間には読みにくいのだが、類書があまりないこともあって、おもしろかった。
近代以降、士族をはじめとする知識人層に受け入れられる傾向にあったキリスト教は、そのためもあって「大衆」への普及力が足りなかったのではないか、という問いが浮かび上がってくる。そこで、にも係わらず一般的なところに「福音」をもたらそうと奮闘した人々の歩みが振り返られる。内村鑑三、羽仁もと子、賀川豊彦。この伝記的な部分がとくに読み応えがあった。
しかし、日本人とキリスト教、というテーマではいま一つもの足りない。なぜ「信者」はわずかなのに、クリスマスや教会での結婚式、サブ・カルチャーにおけるキリスト教的なものの人気は確かなのか、この辺をもっとつっこんで語って欲しかった。まあ、無いものねだりであるし、相当むずかしい話題ではわるのだけれども。