隅谷三喜男さんからの宿題
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日本の教会は、とかく「牧師ががんばってくれないと……」「うちの牧師は……」などと、なんでも牧師まかせにしがちな体質がよく見られますが、こういうスーパー信徒もいたんだ、と知っていただきたいですね。
日本人にとってキリスト教とはなにか。いやそもそも日本人とはどういう宗教意識の持ち主なのか。日本においてクリスチャンでありつづけるとはどういうことなのか。そういうことを論じた本はたくさんある中で、この本は、かなりわかりやすく、しかし、本質的なところを突いていると思います。そして、ふだん日本のクリスチャンが、うすうす気づいてはいるんだけど、なんとなく言葉にしにくいところを、ちゃんと言葉にしてくれているという感じがします。
ただし、そういう「日本人とキリスト教」という問題について、答えを与えてくれている本ではありません。むしろ、とてもわかりやすい形で、問題を整理してくれているという感じです。隅谷三喜男さんから宿題をいただいているという感じですね、日本のクリスチャンは。ここから次に、どう考え、答えてゆくか、ということが大事、という気がします。
他に類を見ない信徒の「神学」
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本書は、2003年2月に逝去された隅谷三喜男先生の遺作とも言うべき本です。第一部は1996年に発行され、絶版となっている『日本人とキリスト教』の再録で、第二部が『日本の信徒の「神学」』となっています。「着物を着たキリスト者」と呼ばれていた隅谷先生は、常々「日本のキリスト教」を、また「信徒の神学」の重要性を語っておられました。日本ではキリスト教が地に足をつけていないことが、キリスト教が広まらない大きな理由であるとし、欧米から輸入された神学によって説教する牧師と非キリスト教的社会に生きる一般信徒との間の溝の大きさを指摘しています。先生はこれを「二階建ての教会」と読んでいます。信徒向けに書かれた本だけに大変に読みやすく、多くのことを考えさせられる本です。信徒ばかりでなく、牧師や神学者に是非読んでもらいたい本です。