若者(60未満)は、これでドイツ語と日本語を勉強しよう
★★★★★
慶大のドイツ語教授、関口一郎氏(残念ながら数年前、50代で物故)の本を何冊か読んでいるうちに、当然ながらその祖父である関口存男(1894-1958)という大鉱脈にぶち当たった。一郎氏が改訂してロングセラーになっている「初等ドイツ語講座(上中下)」も素晴らしいシリーズだが、私は関口存男の真髄はオリジナルで読んだほうがいいと思う。有り難いことに三修社が復刻版を簡易製本の注文生産(POD)で供給してくれている。当時のままに復刻された12巻が1冊6,300〜9,450円(厚さにより1000円刻み)で手に入るのである。一見、高いようだがページ数で割ると現代の類書と同等である。今どきの本より密度が篦棒に濃い。ドイツ語の例文も面白過ぎて困るくらいだが、関口存男先生独特の語り口のほうがもっと面白い。このNo.12は「やさしいドイツ語」が前半約160ページ、「入門科学者のドイツ語」が約300ページの合本で、数年ドイツ語をやった人にお勧めしたい。「やさしい」と題して、いきなり書体がFraktur(ドイツ文字。日本の草書体のようなもの)でビックリするが、Frakturが読めないとちょっと古い原書が読めないから、どっちにしても中級に入った人にはちょうどいい。数年やった人なら例文自体は易しいのでバンバン読めて楽しい。一つだけ残念なのは後半の「入門科学者のドイツ語」が著者他界2年後の改訂版で、現代漢字・かな遣いに改悪されてしまっていることである。旧漢字・旧かなのほうが、戦後生まれ・育ち世代には日本語の勉強にもなるし、何より関口存男先生の語り口にぴったりだ。