読み進めるにつれて、どんどん怖くなる小説
★★★★★
とても怖い小説だった。ジャンルがホラーというのではなく、3人のきょうだいを描いている普通の話なのに、彼らのうち2人の心が次第に崩れて様子に呑み込まれてしまいそうになったのだ。文体もさらりと、普通に書いているように思えるのに、この迫力、この筆力は、何なんだろう?どことなく世間から隔絶された感のある彼らの生活が、それほど奇異には思えないため、物語の行方に怖くなってしまうのだろうか?きょうだいが力を合わせて、漠然とした世間とたたかっている様子も痛々しく、自分にもそういうことが起きるかもしれないと思えて、怖いのかもしれない。
長姉に変化が生じるのは、「うらら」という子の登場がきっかけになってのことだ。タイトルの「らいほうさん」という場所は、彼らのマンションの部屋の専用庭にあるのだが、それはいったい何なのか?姉と弟にとっては、すべてはそれが出発なのかもしれない。最後まで仄めかされたままでいるのも、一層物語を謎めかし、読む者に怖さをもたらし続ける。