そういう時代なんだ。今は誰もが嘘をつく。
★★★★★
恋愛物というよりも、観念的な作品だと思った。
その観念の描き方がスタイリッシュでかっこいい。
男女の愛憎を軸に、人間関係の微妙なあやが軽快に描かれている。
仮に、当人が意図したことを本当のことだとして、
当人が意図していないことは嘘だとする。
すると、本当のことは、簡単に、偶然や関係性がよびこむ
嘘のことに取って代わられ、その逆も、またしかりだ。
規則から逸脱した人が、玉突きのように次の人の逸脱を招きこむ。
そして、最後に突かれた人がこの世から逸脱する。
もっとも、そんな逸脱した死も、物語の最後には規則へと回収される。
規則に従いつつも、規則から逸脱せざるを得ない人々を
描ききった結末は、結局規則に回収されていくのだ。
その規則自体の虚実の揺らぎをみせながら・・。
ただ、この作品をリアルに愉しむには、条件があると思った。
その条件とは、貧乏なオクターブが
公爵夫人クリスチーヌと駆け落ちしようとした時に
小間使いの女がオクターブに言ったセリフを
実感をもって理解できることだと思う。
そのセリフとはこうだ。
「あなたは貧乏だわ。
奥様にはお金がかかるわ。
・・・・・・
奥様は幸せになれない。」