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惜別 (新潮文庫)

価格: ¥578
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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素晴らしい。 ★★★★☆
『惜別』がひたすら素晴らしい。
文章がいたくカラッとしており、すいすい読めた。

作品の書かれた時代と動機がややアレなのだが、
それは読んでいるうちになんとなく分かるだろうし、詳細はあとがきを読めば分かるので問題なかろう。

この作品には文豪:魯迅の仙台医専時代が朗らかに描かれている。有名な藤野先生も登場する。
迷いながらも前に進む青年の姿は非常に爽やかで、読後感も良い。
爽やかではあるものの太宰節は健在であるし(物語後半の魯迅の独白の節など)、お約束の『色黒い顔』も少女のかたちで出てくる。

当時から仙台医専には様々な出自の人がおり、
この作品では津軽人(語り手)、関西人(藤野先生)、仙台人、東京人、そして中国人(魯迅)が特に取り上げられている訳だが、
異なる出自の人々の異なる部分、根本的に同じ部分が細かく描き分けられている。
津軽人の目から見た『大都会:仙台』の姿にも共感できた。
この辺の出自コンプレックスも、他作品と違って明るくまとめられている。



『右大臣実朝』は吾妻鏡を題材にし、将軍実朝を中心に初期の鎌倉幕府を描いた作品である。こちらは結構読みづらい。
私は筋書きの中核を成す出来事のおおよそを知った上で読んだのだが、それでも読みづらかった。

歴史の流れの中での実朝の一挙一動を、近習だった侍が取り上げては褒めそやす、
という形式が取られている為、文章が終始冗長になっている。
また、実際の吾妻鏡の文が節々に挿し入れられているのもあり、マジメに読もうとすると一苦労。

ただ思想的には素晴らしいものがある。
『アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。』
という実朝の台詞にはグッと来た。個人的に太宰の格言の中で最もずっしり来る一言である。
実朝の甥である公暁のヤケっぱち具合、鴨長明の俗物具合にも注目して読むと面白い。
太宰をそこに見た ★★★★★
右大臣実朝は、他の太宰作品とは文体が全く違って、少々読みにくかったが、”アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。”のただ一文に、分けも分からず泣きたくなった。作家と作品を混同するような愚かな真似はしないよう心がけているつもりだが、この一文には、太宰そのものが現れているように思えてならなかった。
惜別は、走れメロスと同じように、十代の、それも高校までに読むべき作品だと思った。友情を軽んずる者、特に読むべし。
井上ひさし氏に捧げるレヴューその2。 ★★★★★
 「惜別」は私の好きな作品だ。初めて読んだときは、正直、あまり印象に残らなかった。井上ひさし氏の著書『太宰治に聞く』に出会ってから、私の「惜別」に対する思いは一変した。
 井上ひさし氏は、創作とは、誰も見ていない事実から、高貴な宝玉を捜し出す行為だ、という太宰の志に触れ、感銘を覚えた。この感銘が、井上氏に「人間合格」を書かせた。井上氏もまた、高貴な宝玉を捜し当てたのである。
 では、太宰が探り当てた高貴な宝玉とは、「惜別」において、なんだったのか? それは、直接には、藤野先生が、ほとんど誰にも知られずに、「周さん」(若き日の魯迅)の講義のノートに、朱筆で加筆・訂正していた、という事実だった。いま、「直接には」、と書いたのには、それなりにわけがある。藤野先生の台詞にだいたい、こんなのがある。民族自決、といっては、他人事のようでいけない。民族自発、私はそれを期待しています。これに対し、「周さん」には、だいたい、こんな台詞がある。やっぱり、精神の問題だ。僕は、すぐに帰国して、文学運動を起こし、民族の自覚を促してやりたい。両者の台詞は類似している。さらに踏み込んだことを言えば、「周さん」は藤野先生の「期待」に応えようとしたのではないか。「惜別」には今挙げた藤野先生の発言を「周さん」が耳にした、という記述はない。しかし、だからと言って、「周さん」がこの発言を耳にしなかった、とは言い切れないだろう。それに、この手記の語り手は「周さん」と交流があったから、語り手を通してこの発言を「周さん」は聞いていた可能性もある。先生は教え子を励ます。教え子は、先生の「期待」に応えようとする。師弟愛、というべきだろうか。「師弟愛」。この言葉が太宰にとって、もっとも近しかったのは、『聖書』におけるイエスとその弟子とではなかったか。とすれば、この「惜別」は『聖書』のオマージュではなかったか。――なあんちゃって。 
実朝を忘れず ★★★★☆
「右大臣実朝」「惜別」の2作を収録。

右大臣実朝は、東鑑からの引用を主体として日々起こり行く事柄を書き、
側近の人物の独白という形で太宰独自の解釈を加え、実朝という人物を描いてゆく。
この独白調は太宰得意の手法で、さすがに堂に入っており、鬼気迫るような完成度を感じる。
滅びの予感を持ちながらも超脱した姿を見せる実朝に、
太宰は貴族としての理想像を見ていたのだろう。
”HUMAN LOST”の中に、「実朝を忘れず」という一行があるように、彼の心の中には常に実朝があったのだと思う。
読後感は、どの小説にもない独特のものがある。

「惜別」
こちらは東北の老医師の手記、という形で、若き日の魯迅を語る。
が、この魯迅は、魯迅というより完全に太宰であり、読み進めているうちに魯迅の姿はまったく消えてしまう。
それを許せるか、許せないかでこの作品の評価は大きく変わるだろう。
太宰最高傑作 ★★★★★
 「右大臣実朝」は面白いと聞いて読んでみてがっかり,貴族の雅な世界観は私には理解しがたいものがあるようだ.まあついでにと二作目に収録されていた「惜別」を読んでみた.これは・・・素晴らしい!
 中国の大勢の民を救うため,魯迅は日本の東北大学に留学してきて医学を学ぶ.だが祖国の現状を知った彼は,望んでいた救済は医学によっては得られ無いと判断,大学を去り,新たな道を模索することになる.
 時が流れ,本当に多くの人を救うのに必要な「思想」を彼は手にし「狂人日記」「阿Q正伝」「故郷」等で知られる文豪魯迅は誕生する.読み応えは十分だ!
論文の役に立つことでしょう! ★★★★★
論文の役に立つことでしょう!