自称「たいした取り得もない」都会育ちのユダヤ人、サミュエル・クレイマンとジョセフ・カバリエの出会いは、ベッドの中のサムに母親が「少し場所を空けてあげなさい、この人はあなたのいとこよ。ナチに占領されたプラハから逃げてきたの」という言葉をかけたことから始まった。信じがたいことだがこれが美しい友情の始まりであった。やがてコミックのストーリー作りの才能があるサムと、非の打ちどころのない本格的なデッサン力を持ったジョーの力が1つになってコミック界のスーパーヒーローが誕生する。突き出たあごに丈の長い紺青色の下着姿がまるで拳銃のような「エスケーピスト」(現実逃避者の意)は、「世界中を歩き回っては驚異的な手腕を発揮し、国家権力の圧制に苦しむ人々を助けに向かう!」こうしてカバリエとクレイ(2人はサム・クレイマンという名を使っている)は本人たちも知らぬ間に「コミック黄金時代」の中心になっていく。
だがジョー・カバリエを突き動かしているのはもっと複雑な動機で、そんじょそこらの物書きとは違っていた。事実、コミックアーティストとしてのデビュー作で彼はヒトラーを稀代の奸物として扱う(最初の作品で「エスケーピスト」はヒットラー総統の顎に「致命的な強力パンチ」を見舞っている)。その後「エスケーピスト」とその盟友たちは、悪しき「アイアン・チェーン」とその指導者「アッティラ・ハクソフ」と対決する。戦争は長引くにつれいっそう激しさを増し、家族を救出しようとするジョーの努力も失敗に終わる。自分はこの戦争を筆とインクで戦っているのだと考えるジョー。やがてその積年の思いは、シュルレアリスムの画家で宿命のミューゼ、ローザ・サックスとの出会いをもたらす。しかしコミックという虚構の世界でも挫折するジョーは自己からの逃避を図り、ローザとサミーのもとを離れることで自分を取り戻そうとするが、いよいよ泥沼に足を突っ込むことになる。
まだまだ驚くような冒険が続くが、読者の楽しみを奪うつもりはない。マイケル・シェイボンは、この「エスケーピストの破滅」と似たような小説を書いている、と言うにとどめておこう。前作『The Mysteries of Pittsburgh』(邦題『ピッツバーグの秘密の夏』)や『Wonder Boys』(邦題『ワンダー・ボーイズ』)もきらりと光るウィットに富んだ作品だが、今回の作品でようやく作家としての彼の才能を発揮できる大きなキャンバスを見つけたようだ。
この作品全体に流れるテーマは愛であると言えるだろう。それは、ときには希望を失い、ときには傷つく、痛ましいほど誠実な登場人物たちへの愛であり、論じるのが難しい戦時下のニューヨークという特異な状況や滑稽なほど純真な人たちへの愛であると同時に、コミックそのものに対する愛でもある。作中のコミックは「大きな夢を抱いた500人の、大人になりつつある若者たちの着想による苦心の作」なのだ。そのような明るい面は、小説にホロコーストの問題を取り上げることで、さらに強調される。芸術は、実際に悪と戦うことはできないにしても、抵抗の姿勢や希望を描くこと、つまりすべてが狂気と化していく世界から脱却するくらいのことはできるのだ。ジョーによれば、コミック評論家たちは「逃避願望を満足させる行為が若者たちの心に及ぼす致命的な影響を指摘することに終始している。まるでそれが、人生における最も高潔かつ重要な仕事だと思っているかのように」。まったくそのとおりである。
Mr Chabon's prose is passionate and, yes, purple in places, a narrative device used to lift the lyricism off the page. Sometimes I looked up unfamiliar words; sometimes I didn't. I found Leo Rosten's 'The Joys of Yiddish' useful for looking up Golem of Prague and some Yiddish words. I enjoyed all the references to Harry Houdini; for the reader who wants to know more about him, I recommend reading 'Houdini!!!' by Kenneth Silverman. Mr Chabon provides a clue to his extensive research in his Author's Note and gives excellent suggestions for reading more about New York City during the 1930s to 1950s; Prague during the 1930s to 1940s; magic, magicians, and escape artists; the Antarctic; the Kabbalah; radio and comic books; and Levittown. 'Kavalier & Clay' is a tender love story writ large that caresses some controversial themes with sensitivity, humor, and grace and well deserves its Pulitzer Prize.
I can relate: as a full-time Japanese housewife and fishing widow (like a football widow) with salaryman husband (long commute,) two active little boys, and no babysitter, of course, I have only just reached the stage where I can usually keep up with the front page each day (catching up, occasionally, when I chance upon a missed day`s issue while wrapping fish entrails.) Yet somehow, I managed to read this adult`s novel all the way to the satisfying close in less than a week: a feat I have not accomplished since the birth of my first-born. I kept wanting to know more: it kept me hoping, and delivered. Yet this is no typical American Dream. There is no TYPICAL American Dream, anyway.