冒頭の「私の個人主義」の紹介は良かった
★★☆☆☆
冒頭にある夏目漱石の「私の個人主義」に著者は過去に感銘を受けている。私もこの講演録
は大好きであり、その点では著者と通じ合うところがある。権利と義務、権限と責任をわきまえ
他人の個性を尊重しながらも、自らの個性を大切に育て伸ばすべき、というのが漱石の主張で
ある。(「私の個人主義」とは、言い換えると「私の個性尊重主義」であろう)
恐らく本書で著者が一番言いたかったのはその点であり、それがために多数の断片的ではあ
るが多くの事例を限られた頁に羅列したのであろう。以下の書評にもあるように、確かに分類
はされているものの、内容的には広く浅くの紹介で、正直「はじめに」のところで受けたような
心に残る文章は少なかった。
しかし、雑多な紹介ではあったが、逆にいうと定年後の幸福感や満足感はその人の人生経験
や考え方によって人それぞれであり、決して決まった考え方がある訳ではないという実例紹介
としては十分に役に立った。
私も定年まであと十年を切ったので、定年後の趣味として、amazon.co.jp への書評投稿を
趣味のひとつとして著者に紹介してもらえるようになろう(?!)と思います。
定年をあと数年後に迎えた自分が読むと、かえってあせった本
★☆☆☆☆
定年を数年後にひかえた自分にとって、中身の薄い本。
かき集めただけの事例集という感じで、事例も深く掘り下げたものではなく、表面をなぞっただけのもの。
しかも、著者に都合のよいように複数の事例が組み合わせられて話を展開している部分もあり、なんだか、情報操作されているような感じさえ受ける。
8万時間とか7万時間うんぬんというくだりも、もう、何度も言われていることであるが、これは間違い!
だって、定年後の8万時間が、現役時代の労働の8万時間と同じだなんて!
そんなはずはない。
計算上は同じでも、若いころの8万時間のほうがずっと価値があっただろう。
それにしても、この本で、定年後―豊かに生きるための知恵、が得られる人はすごくシアワセな人だと思う。
定価で買うと後悔する(無駄になる)本の見本のようなものであり、図書館などを利用すべきだろう。
定年後の生き方サンプル満載。
★★★☆☆
第一印象は、職業・資格一覧、電話帳の広告ページを見ているが如し。後で見たら確かに帯に「本書では定年後の選択肢が無数にあることを提示した。」「悔いのない8万時間のためのヒント満載ガイダンスの決定版!」と書いてあった。著者は長い年数をかけて定年退職者の取材を続け、多くの声を聞いて各人の様子を紹介する内容になっている。色々なジャンルに分け、例えば第二章仕事を創る、第三章たのしむ、学ぶ、第四章家族を見つめる等々となっているのはいい。但しその個別具体例は、大体5行〜6行で目まぐるしく、記述に深みがない、単に現役時代何をしていた人が、定年後にこう考え、こうして、今はこんな風にどうこうしている、全編に渡ってこれの連続ではかなわない。登場人物をもっと減らして、定年前後の迷い、定年後の生活ぶり、新たにトライする状況・努力風景を詳しくじっくり描いて欲しかった。そもそもが早期退職した人、定年を迎えた人から、80歳代、90歳代の人までの事例が、本書の中で同居では、読者として私とは波長が合わない書であった。50歳代、60歳ならこれからどう生きるかの指針を示す事例を、70歳以降なら老後をどう元気に生きているかの事例を、読者層に分けて2分冊で出版すべきだ。団塊の世代の定年に焦点を合わせて本書を出版したなら、前篇は参考になり役にたつはずだ。同じ新書版であれば、「五十歳からの人生設計図の描き方」(角川)、「現代老後の基礎知識」(新潮)、「54歳引退論」(筑摩)、「週末起業」(筑摩)の方がずっと役に立つ情報が一杯であった。