この『筑後川』の楽譜が入手できることに感謝して
★★★★★
邦人合唱組曲の名曲です。30年ほど前には、本当によく演奏されましたが、最近では演奏される機会が少なくなりました。まだ今でも購入できるのは嬉しい限りです。
日本を代表する作曲家の團伊玖磨の作品です。とても骨太の曲ですが、技術的には平易です。音楽の骨格がとてもしっかりとしていますので、歌いこめば歌いこむほど味わいが深まる曲です。團伊玖磨はオーケストラを中心とした多くの作品を残されました。合唱曲としては『海上の道』『岬の墓』などがありますが、共通しているのは合唱曲でありながら、交響曲のような大きな音楽構成を持っているところでしょうか。ピアノの譜面を見ますとそのスケール感が良く感じられます。
丸山豊の詞も雄大です。筑後川と流域の雄大な景観を描写しながら、人生の歩みを象徴しているかのような深い味わいが感じられる歌詞です。含まれる内容が豊かなせいか、若い時に感じた趣とは違う印象を持つこともあり、それが多くの年代の合唱人に愛される所以だと思っています。
最終曲「河口」の雄大さは、いつ聴いてもいいです。歌っていると、感動の「河口(フィナーレ)」を迎えます。これは聴くよりも歌うに限る曲です。近年では中学生や高校生の合唱コンクールの曲としても歌われているようです。歌い継がれてほしい合唱曲の一つだと思っていますので嬉しい傾向が生まれていて何よりです。
「みなかみ」、「ダムにて」、「銀の魚」、「川の祭」、「河口」の5曲で構成されています。久留米音協合唱団の委嘱によって、1968年(昭和43)12月完成し、同時に、作曲者團伊玖磨自身の指揮により初演されました。