日本を代表する作曲家・團伊玖磨の『筑後川』は、邦人合唱組曲の名曲です
★★★★★
以前は本当によく演奏されましたが、最近ではその機会が少なくなり残念です。ただ今でもこの曲のCDを購入できるのは嬉しい限りです。
『筑後川』の初演団体の久留米音協合唱団と、福永陽一郎氏の指揮、日本アカデミー合唱団(実際は京都エコーのメンバーが中心)との演奏を聴き比べることができますので、この曲を演奏する合唱団にとっては押さえておくべき音源です。
どちらも骨太の演奏です。音符も比較的簡単で、歌唱に必要な技術もさほどいりません。ただ、音楽の骨格がしっかりとしていますので、歌いこめば歌いこむほど味わいが深まる曲です。御存知のように團伊玖磨はオーケストラを中心とした多くの作品を残しています。合唱曲としては『海上の道』『岬の墓』などがありますが、共通しているのは交響曲のような大きな音楽構成を持っているところでしょうか。ピアノの譜面を見ますとそのスケール感が良く感じられます。
丸山豊の詞も雄大です。筑後川と流域の雄大な景観を描写しながら、人生の歩みを象徴しているような深い味わいが感じられます。「みなかみ」「ダムにて」「銀の魚」「川の祭」「河口」の5曲で構成されており、最終曲「河口」の雄大さは、いつ聴いてもいいです。
これは聴くよりも歌うに限る曲です。近年では中学生や高校生の合唱コンクールの曲としても歌われているようです。歌い継がれてほしい合唱曲の一つだと思っていますので嬉しい傾向が生まれていて何よりです。
久留米音協合唱団の委嘱によって、1968年12月完成し、同時に、作曲者團伊玖磨自身の指揮により初演されました。