また著者に良い意味で騙された。爽やかな読後感です。
★★★★☆
ミステリー界の新鋭、貫井徳郎氏の書き下ろし長編です。
私は、貫井氏をトリックスターだと思っています。
これまで読んだ作品の多くでその奇才に触れてきたからです。
そして、今回もその奇才にやられました。
毎度のことながら、いくつも伏線が貼ってありながら、すっかり騙されてしまいました。帯に「この衝撃は他言無用に願います」と書かれているにも関わらずです。
いつも騙されてしまう、その理由は、著者の文章力にあります。本書で言えば、前半部分は紛う事なき青春小説に仕上がっています。謎は謎として提示され、そこを意識しつつも青春小説が上手いのでつい引き込まれてしまうのです。中盤も、一つの物語としてどう繋がるのか意識しつつも、上手いから読み進んでしまいます。そしてラストで、「あー!」と声を上げてしまうわけです。いやはや、ほんとに上手い。
読後感も良い、爽やかな一冊だと思います。
ひとりひとりが他人のために何かをしてあげられたら、ちょっといいことに繋がりそうじゃないか?
明日の空は晴れ。
そう思うことで、未来は明るくなるのです。
ページ数が少なくて物足りなかったが、それでも最後まで楽しめた
★★★★☆
PART1〜PART3の3部構成となっており、全体のページ数が176ページと少なかったのであっという間に読み終わった。
PART1は帰国子女の栄美(エイミー)が日本の高校に入学して恋をするのだが、デートをしようとするといつも邪魔が入ってしまう。日本の個人よりも集団を重んじる文化に馴染めないエイミーの様子が丁寧に描かれていた。PART2は六本木で英語力を高めようと観光客相手に道案内をするユージと、六本木で知り合って友達となったアンディの友情が微笑ましかった。
PART1とPART2、全く別の物語が展開され、どちらも続きが気になる中途半端な形で終わるのだが、その伏線が見事にPART3に絡んできて最後まで楽しめた。
明るいどんでん返しに結構楽しめて読めます。
★★★★★
この著者の作品は、結構暗くてシビアなものが多いけれど、これはいわゆる青春小説で、コ憎たらしい悪ガキが出てくる程度で、お話そのものは、結構いいなと思わせてくれます。
最初の、なぜか邪魔がはいる栄美と飛鳥部君のデート。それから、場所は六本木に変り、意味深な二人の友情ものがたり。
お話はどこへ行くのかと思えば、最後はピッタリうまく納まって、納得。
好きなお話ですね。今までの著者の作品を期待すると・・かもしれませんが、
これだけ読めば、面白くて、温かい感じのするお話だと思います。
やや物足りないが後味の良い作品です。
★★★☆☆
最近気になって欠かさず読んでいる貫井徳朗さんの新刊です。
今回の小説はページ数も170ページと短く文章中に出て来るテンポ良い会話も小気味良くあっと言う間に読み終えました。
日本で新たに高校生活を始めた帰国子女の栄美(えいみ)が物語の主人公。
クラスメイトは明るく親切で、栄美は新しい生活を楽しみ始める。
だがひとつ奇妙なことが。気になる男子とデートの約束をするようになるが、なぜかいつも横槍が入り…。
物語はPART1〜3に分かれておりPART1を読んだだけでは、釈然としない悶々とした感じが残り、
続くPART2でも(何か伏線があるんだろうな…)とは思いつつもスッキリせず、
そしてPART3で一気に全ての伏線の謎が溶けてスッキリ…と言う展開になっています。
謎が溶けてスッキリしたのも束の間、ラストに至るまでに又悲しい気持ちになり、
それでも最後の最後には希望が見える、そんなお話です。
恋のお話にミステリー、そして人間の裏、温かみ、色々な要素が含まれていて
後味の良い作品に仕上がっていると思いました。
ややもの足りません。
★★★☆☆
この作者さんはお気に入りで、結構著作を読ませていただいております。内容的にはシリアスで重めの作品が多いように思いますが、本作はそれらの作品とは毛色が違っておりました。
長編というよりは中編程度の長さで、おそらく1時間ちょっともあれば読了出来ると思います。物語自体はとりたてて新味のあるものではなく、帯にもありますが仕掛けられたトリックを味わうための小説ではないかと思います。この点に関しては当然ここで詳細に触れるわけにいきませんが、「煽りすぎではないかしら?」というのが正直な感想。残念ながら多くの方は、このトリックに満足できなければ、この小説自体に満足できないということになってしまうのではないでしょうか。
キャラクターの設定とか話の運びに無理があるようにも感じられましたし、高い満足度は得られませんでした。著者の真骨頂はやはり社会の内包する問題を鋭く描く長編にあるような気がしますので、次回作に期待させていただきます。