新たに講演記録が発見されたので、前のものを聴いてみた。
★★★★★
二十数年前二十代の頃に氏の著書を、タイトルは忘れたけれど、読んだ覚えはあるのだが、今ひとつ入ってくるものがなかった。心構えができていなかったのだろう。この度本講演CDを聴いて、これが小林秀雄だったのか!?と目を丸くした。まさに横丁の何でも知っているご隠居さんの昔話や説教を聴いているような、なんとも懐かしいような、軽妙洒脱な話術にぐいぐい引き込まれた。しかも端々に鋭い洞察が冴え渡って黴臭さなど微塵も感じさせない。ま、たしかにところどころ時代遅れの説がないではないが、氏の独特のものの見方、思考スタイルは今でもはっとするほど瑞々しい。フロイト、ユング、ベルクソン、宣長、仁斎の話もでてくる。圧巻は、氏の叔父の話、こういう妙好人たる叔父の無言の姿を見て氏の思索は深まっていったのだろうと想像されて、得心する次第。もっと聴いてみたくなること間違いなし。