「ウイスキーが、お好きでしょ」
★★★★☆
「本書は『モルトウィスキー大全』(1995年)、『改訂版モルトウィスキー大全』(2002年)
に続く第3弾であり、2009年9月の時点で操業中、あるいはボトルが入手可能な世界
141の蒸留所を紹介したものである」。
実際に各蒸留所を取材して回ったらしく、ブランド名の由来、歴史、製造法などと
ともにテイスティング・ノートを併記。
例えばラフロイグOB12年ならばこんな感じ。
「香り・・ピートの湿地、スモーク、暖炉のピートの燃えかす。木炭、針葉樹。加水を
するとスィートでフレッシュ、青リンゴ。
味・・ライトからミディアムボディ。スムーズでスパイシー。口の中でたき火をした
かのよう……。バーベキュー。加水で弱くなる。
総評・・以前より洗練されたが、やや一本調子……。いつまでも口の中にピート
スモークが残る。ストレートで」。
いやはや、アイラモルトのピート臭にいちゃもんをつけるとは。というか、「暖炉の
ピートの燃えかす」の匂いなんて大半の日本人は嗅いだことなんてないだろうに。
そもそも人間には絶対味覚、絶対嗅覚のようなものなんて成立しようがないわけで、
これらの印象論については参考意見程度にすればいいと思う、もちろんコンディション
次第で味なんていかようにも変わるわけだし。
その上で、写真ひとつにも異国情緒がにじんでいるし、今となってはググれば容易に
引き出せるとはいえ、トリビアも豊富に盛り込まれている。
其処彼処に筆者の上から目線な自意識過剰は窺えるけれども、労作であることは確か。
お金さえあれば、本書を目安にウィスキーをあれこれ試して、ああ、騙された、なんて
思いつつ、運命の一本に出会えれば、それでいいのではなかろうか。