心まかせにページを繰ると、スコットランドの風と土と水のにおいがフクイクと香り立つ。ゴージャスで重厚で、しかも楽しい本である。アバフェルディからタリバーディンまで119本のスコッチが1本いっぽん並ぶカラフルな見開きページはまるで豪華な洋酒棚。つい水割りグラスが欲しくなるが、日本式の「ミズワリ」は「モルトを台無しにする」と書いてある。
モルトに加える水の量はあくまでも「ワンドロップ(アルコール度数30ないし40%)」でなければならない。しかし、少量の水なら、かえってモルトの香りを開いてくれる。それでも水道の水は論外で、望ましいのは「マザーウォーター(精製水)」、そこまでいかなくとも、せめてミネラルウォーターで飲むべきだという。ミネラルウォーターでも「スコッチに合う水」と合わない水があるらしい。著者のテストによれば、マザーウォーターに次ぐのが「南アルプスの天然水」で、あと「ヴォルヴィック」「六甲のおいしい水」「ハイランドスプリング」「エヴィアン」と続く。こんなふうに、モルトの歴史、各蒸留所の特徴から、モルトの正しい飲み方、モルトを飲むのに適したグラスの形まで、懇切丁寧に教えてくれる。
どのページにも豊かな情報と美しい写真が詰まっているので、どこから読みだしても楽しいが、たとえば、ウィスキー好きなら一度はその名を聞いたことがあるに違いない「マッカラン」のページをめくってみる。これは「シングルモルトのロールスロイス」だそうだ。なかでも18年物は、最近出た1948年ビンテージに次ぐ銘酒らしい。
この本を開くまでは、モルトとグレンの違いも、シングルモルトがなぜ「シングル」なのかも知らなかった。しかし、スコットランドのハイランド、ローランド、スカイ島、マル島、アイラ島、アラン島 オークニー諸島に展開する119の蒸留所を訪ね、モルトを育んできた自然に触れる紙上の旅を終えるころには、モルトについてウンチクを傾けたい誘惑にかられているのである。(伊藤延司)
とても良いモルトの入門書です
★★★★★
とても良いモルトの入門書です。
私は、この本(改定前の本)を元に片っ端からモルトウィスキーを購入して飲みました。
(残念ながら手に入らなかったものもあります)
いろいろな方がいろいろなことをお話なされていますが、結局は趣味の問題ではないでしょうか。
もちろん著者と違う印象を持ったウィスキーもありますし、数年たって購入して飲むと何か変わったかなと思うお酒もありました。
そもそも嗅覚や味覚や好みなんてものは、個人によって大きく差があります(そもそも、個人の多様性が無ければ、人類なんて、すでに絶滅しています)、飲んでいる間に経験もして感性もすまされ、と同時に加齢もして、また感性も鈍ります。
日本酒党の人に昔聞いた話では、「利きを自慢するな」という言葉があるそうです。
生まれながらにして持った嗅覚や味覚があり、また発達の過程で備えた嗅覚や味覚が個人々で違うのは、朝にいちいちお天道様を見なくても、朝が来たことがわかるくらい当たり前(寅さん調ですね)ということではないでしょうか。また、ワイン通の人にも日本で3000円以上するワインはビンテージですよとも言われました。
結局は本人の好き嫌いだと思います。
確かに著者と違うと思ったこともありますが、日本においては数少ない指南書だと思います。(イギリスではどうかは知りませんが)
でも、書籍は書籍です。イメージは湧きますが、本当の香りや味はわかりません。
これを書きながら、ロイヤルコープ(すでに無きブレンドウィスキー)のたまたま手に入れたボトルを開けながら、こんなウィスキーもあったんだと、うまい/まずいは別にしてちびちびやっています。ウィスキーへの扉を開いてくれた、この本のおかげです。
モルトバーに行く楽しみがひとつ増える
★★★☆☆
・ウイスキーの香り、味の表現も勉強になる、例えば、香りなら、「豊でオイリー、干草」。
・ブレンデッドウィスキーに使われているモルトが掲載されているので、一つのブレンデッドに使われているシングルモルト達を飲み比べる楽しみ。
・モルトウィスキーの出来るまでがカラー写真入りで紹介されている。
飲みたい銘柄を選んでから、バーに行ってみては?
改訂版 モルトウィスキー大全
★★☆☆☆
マイケル・ジャクソンの本をかなりの部分で意識している。かの本とご同様に、基本的にアイラモルトの評価が高く、ハイランド、スペイサイドの評価が低め。それと、シングルモルトの場合、製造年度はもちろん、ボトルメーカーの出来不出来が大きな要素をしめるが、それへの言及も少ない。確かに入門書としては好個だが、物足りなさが残る。また、土屋守ラベルのウイスキーを飲んでみれば、その裏ラベルにある説明から、この方の評価が必ずしも当てにできないのは実感できよう。
シングルモルトの基本
★★★★☆
美しい装丁の本である。いけないことだとは思いつつ
なんだかそれだけで許せてしまう。
長い歴史に培われたウイスキーは
その銘柄毎に物語を持っている。
その物語に思いを馳せながら飲むシングルモルトは
また違った側面を見せてくれる。
人の味覚というものは、
舌でキャッチする化学的反応のみならず、
付随する物語とともに脳で味わうものであるからだ。
この本は十分にその期待に応えてくれている。
読みながら飲み、飲みながら読む
★★★☆☆
95年初版では見事にモルトの世界に引きずり込まれました。酒というものは土地と密着しているもので、気候風土あるいは歴史などを知ることで一層その酒がおいしく感じられます。写真だけでも楽しめて、しばしスコットランドに思いを馳せられます。夜、モルトを飲みながらパラパラとめくるのが一番でしょう。
ただ、マイケル・ジャクソンにしてもそうですが、筆者の嗜好が随所に現れており、彼らの高評価が必ずしも一般的普遍的な評価とは言えない部分もあるかと思われます。(私自身は土屋氏が自らの顔の絵の入ったラベルのボトルを発売して以来、氏のファンをやめました。)