精神の絆で結ばれた師弟の、珠玉の往復書簡
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劇作「ファウスト」で余りにも有名なドイツの大文豪・詩人である老ゲーテと、後世「衣装哲学」等の著作で名を残す、イギリスの若き気鋭の哲学者カーライル。ついに生きて合い見ることの叶わなかった二人の師弟の、清冽な交流が胸を打つ、素晴らしい往復書簡です。
国や民族の境を越え、ゲーテを精神の師と仰ぐカーライルの真っ直ぐな求道心と、異国の才能ある若者に、敬意をもって自分の知恵を教え与えるゲーテ。トルストイとロマン・ロランの交流を彷彿とさせます。また、本書には、ゲーテが晩年深く信頼した弟子・エッカーマンと、カーライルの間に交わされた書簡も収録されています。
ゲーテは全体像があまりに巨大すぎ、活動が多方面に亘りすぎているため、どうしてもその著作や多彩な恋愛等の生涯を表面的に理解するだけに留まりがちですが、この書簡を読むと、「世界文学」を標榜して文学で人類に貢献しようと挺身し、後進の育成にも心を砕いていたゲーテの実践者・教育者的な側面を感じることができます。
個人的には、陰の功労者的存在のエッカーマンの手紙が読めて嬉しかったです。彼の献身については、清水書院の人と思想シリーズ「ゲーテ」に詳しく書かれているので、そちらもお勧めです。