《午後の紅茶》みたいな、傑作。
★★★★★
ケイト・ブッシュのアルバムは、どれも傑作ぞろいだが、その中で、一番親しみやすいのは、このアルバムかも知れません。どこか、《秋の日の午後》を思わせる、ゆったりとしたムードは、聴いているこちらの方まで、ゆったりとしてしまいます。あと、隠し味として、《色気》が散りばめられているのも、心地好いです。休日は、このアルバムを聴いてゆっくりと言うのも、また良いです。
英国屈指のヴォーカル・アルバム
★★★★★
78年発表の2nd。英国を代表する女性シンガーと言えば彼女の名前が上がるのが当たり前であり、完全に孤高のイメージすらある傑出した才女だが、初期の彼女にはそうしたアーティスティックな側面と共に多分なポピュラリティーを有しており、凄いと思わせるヴォーカルの美しさと同時に誰が聞いても親しみを覚えるメロディを持っていた。この作品ではデビュー作にあった溢れ出る才能を一旦整理してトータルとしての完成度を押し進めた感があり、より完成度が高まっている。派手さを極力押さえたオーケストレーションも絶妙のさじ加減であり、楽曲の色付けとしては非常に見事な仕事ぶりである。全曲素晴しく文句の付けようがないが、愛国心とは一味違った揺るぎのない祖国への愛を歌ったタイトル曲は絶品だろう。バックには元コックニー・レベルのスチュワート・エリオットとダンカン・マッケイ、パイロットのデヴィッド・パットン、イアン・ベアンソンらが参加している。
デビュー作も本作同様に歴史的名盤とも言って良い優れた作品だが、某テレビ番組に「嵐が丘」が使用されているために聞く機会が少なくなった。そこで格段に聞く頻度が高くなったのが本作。そんな人も多いのではないだろうか?何にしてもこの人を超える女性シンガーがほとんどいないことは紛れもない事実。聞けば誰でもそう思うだろう。
とにかく歌が上手いのだ
★★★★★
彼女のアルバムはどれもかなり聞き込みましたが、結果として最もよく聴いているのがこのLionheartです。楽曲のレベルはKick InsideやNever for everの方がやや上か?と思ってしまいますが、Kateの歌の上手さ、表現力の多様さはこのアルバムの方が勝っていると思います。全曲とも高水準ですが、特に、Wowのサビの部分の歌い方は“発明”として特許をあげたくなる位素晴らしい!メロディーが複雑な曲が多いので、初めのうちは馴染めなくとも、聴けば聴くほど心を捉えて離さない名盤です。まずは輸入盤のbookletにも付いている歌詞を読みながら彼女の歌の上手さに重点を置いて聞いてみてください。
当人が自己プロデュースの必要性を感じたアルバム
★★★☆☆
このアルバムはデビュー作が出て幾らも経たずに発売。というのは、新曲らしいものが3曲しかなかったからであった(青のシンフォニー、など)これの録音でプロデューサーと衝突。79年末に英で放映された彼女の特別番組では、レコーディング室にいるケイトの姿。コントロール・ツマミを上げ下げするレコーディング・スタッフ。「いいえ、違います」と連発するケイト。曲は『コーヒーはいかが』だったが…。この次、『ネバー・フォー・エバー』から彼女は裏方の仕事に加わる事になった。(80年9月発売の3rd)尚、この『ライオン・ハート』ジャケは、彼女の生家で撮影されたものです。これからは2枚のシングルが英でカット。しかし、以外な事に『ハンマー・ホラー』の方は
ケイトのシングルで下から1、2の成績で振るいませんでした。プロモの衣装が悪趣味すぎて、DJ達から嫌がられたのかも(英では、ヒット曲は多くがDJの好みで左右されます)。
見知らぬ森に踏み込んだかのような錯覚を覚える独特の味わい
★★★★★
聴き手は最初の一音を耳にしたときから、時には妖精、時には道化、時には魔女と化したケイトの、愉悦・不安・驚きなど様々な感情をもたらす夢想の世界に翻弄されることだろう。またケイトの精神的バックボーンをしみじみ歌う#5を聴くとき、彼女の精神世界の深さをうらやましく思うのは私ばかりではあるまい。作品全体が緻密で、これほどまでにほころびのないコンセプチュアルな音楽世界を築きあげられるのは彼女以外そういるものではない。「ライオンハート」は聴き手に決してハイな気持ちを呼び起こすわけではないが、#3のさびで感じる空を飛ぶような感覚など、ちょっと怖い童話の主人公を演じきったような聴後感、見知らぬ森に踏み込んだかのような錯覚を覚える独特の味わいが心地よく、感情の発露が鈍り!かけた現代人の心を再生してくれる一枚だ。