実務家向けの入門書
★★★☆☆
仕事でオーストラリアと関わっている日本人は少なくないはずである。私もその一人だ。ところが、オーストラリアについて勉強してみようと思っても、思いのほかオーストラリア関連の本は極めて少ない。そんな中、手に取ったのが本書だった。
本書の強みは、何と言ってもその網羅性にある。オーストラリアのあらゆる面について紹介してあり、本書を読めば、オーストラリアに関する基本的知識を万遍無く身に着けることができる。また、本書の特徴は、全ての章が学者によって書かれてあることである。これについては長短があり、外交や経済についての解説は実に的確だったが、他方で文化など、学者の守備範囲を超えている分野では、記述に限度があることが否めないように思えた。
おそらく本書の筆者達は大学生もしくは大学院生をターゲットにして本書を書いたのだろうか、大学生にとって本書を読み通すのは難しく、大学院生にとっては自分の専門分野についての記述は逆に簡単すぎて役に立たないのではないか。私は、本書はオーストラリアと仕事で関係してきて、オーストラリアの様々な面についてある程度の知識を有している人間が、オーストラリアの全体像を眺めるための本であると理解した。