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物語オーストラリアの歴史―多文化ミドルパワーの実験 (中公新書)

価格: ¥903
カテゴリ: 新書
ブランド: 中央公論新社
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手堅い入門書 ★★★★★
日本を代表するオーストラリア外交研究者による入門書。
入門書とは言っても、その内容はかなり充実しており、この一冊を読めばオーストラリア外交の歴史は一通り理解できたと考えていいだろう。入門書ということで、当然わかりやすく、興味を引くように書かれているのだが、かと言って変に単純化してしまうこともなく、オーストラリア外交をこれから勉強したい者に、安心して進めることができるテキストだ。また、本書は、「世界史におけるオーストラリア」、「アジア太平洋におけるオーストラリア」という視点が常に意識されているのが特徴的である。とかく国際関係(史)の脇役になりがちなオーストラリアであるが、本書は(少なくとも国際関係史を学ぶものにとっては)それを表舞台に引っ張り出してくれたといえる。
国家アイデンティティの模索 ★★★★☆
 1952年生まれの国際政治史研究者が、2000年に刊行した、オーストラリアの国家アイデンティティの模索に関する本。1770年以来、イギリス植民地の集合体として開発されたオーストラリアは、既に19世紀には他民族社会であった(第二章2)。1901年、関税の撤廃、アジア系外国人労働者の排除=白豪主義、帝国主義戦争への備えのために、六植民地が英帝国内のオーストラリア連邦として統合されたが、州政府の権限は中央政府より強かった。同国は英帝国の戦争に参戦して発言力を強め、日英同盟・日露戦争への支持によりロシアの脅威を、第一次大戦によりドイツの脅威を、第二次大戦により日本の脅威を排除した。しかしこの過程で大英帝国の衰退が露呈すると、同国は対米同盟重視へ転換し、メンジース政権の下で反共親米政策と前進防衛政策を通じた、大国政治への関与を模索した。しかしベトナム戦争でこの夢が挫折し、インドシナ難民の大量受け入れを余儀なくされると、ウィットラム労働党政権は第三世界外交の推進、専守防衛政策、白豪政策破棄へと急速に転換し、以後オーストラリアは東アジア志向を前面に出した多文化ミドルパワー政策を追求する。具体的には、多文化政策、アジア太平洋を中心とする地域主義(日本、NIEs、ASEANとの提携によるAPEC、環インド洋構想)、多国間外交(ケアンズ・グループ結成)、ニッチ市場における提言型外交(カンボジア和平、韓国との協調による北朝鮮との国交)等が実践されている。ハワードによる君主制支持の演出(274頁)やハンソン現象のような、保守派の揺り戻しは見られるものの、著者は基本的な国策に変わりはないと見ている。本書はオーストラリアの国策の変化を、国際情勢を踏まえた戦略論の観点から説明しているが、その分国内情勢の分析が手薄に感じられ、特にアボリジニ政策への言及が殆どないことが特徴的である。
世界の中のオーストラリア、日本にとってのオーストラリア ★★★★☆
国際関係に重点をおいたオーストラリア史だが、豊富な内容を簡潔にまとめた好著だと思う。オーストラリアというと、「豊かな自然と気さくな人々」、といった観光パンフレット的イメージが先行しがちだが、かつては「アジアに包囲された白人社会」として強烈な人種意識を発達させ、白豪主義によって有色人種の移民を排除していた。その国が今日では、アジア太平洋地域の一員としての意識を強め、多くのアジア系移民を受け入れる多文化社会へと転換してしまった。これは非常に大きな変化であり、もっと関心がもたれてよいことだろう。

本書は、イギリスによる植民地化の経緯からはじまって、オーストラリアの地政学的環境や、イギリスとの関係の変化に触れながら、白豪主義の背景と、それが1970年代以降大転換をとげた経緯について、分かりやすく説明している。本書は直接にはオーストラリアを対象としているが、叙述の過程では、カナダや南アフリカの歴史を含めた、イギリス帝国の歴史にも触れており、米ソの冷戦を中心とする戦後史像からは抜け落ちやすい、イギリスの視点からの国際政治史にも目を開かせてくれる。また、日豪関係についての叙述も充実しており、「アジアの中の日本」を考える上でも有益な本である。

「物語」風の叙述を期待するとあてが外れる、という意味で星4つとしたが、世界の中のオーストラリア、日本にとってのオーストラリアを考える上では最適の入門書といえるだろう。
「白人の国」の挫折と挑戦 ★★★☆☆
意å¤-なとã"ろに口ã‚'出ã-てくるオーストラリア、æ°-がつくと参加ã-ているオーストラリア…、というのが、かの国に対するわたã-の印象だった。ã"の本ã‚'読むとã"の国のå¤-交æ"¿ç­-の変遷がよく分かり、現在の「国際社会へのほどほどの貢献」が苦悩の末の選択だったã"とが知れる。

アジア人ã‚'åŠ'働力とã-て移å...¥ã-ながら国æ°'とã-て認めなかった経緯は興å'³æ·±ã„。白人の繁栄のための「手段」でã-かないアジア人。やはりアングロサクソンの国だったか。読み進むと白豪主義の挫折の上に今のオーストラリアがあるã"とが分かる。今でã"そ親æ-¥å›½å®¶ã®ã‚ˆã†ã«è¨€ã‚ã‚Œã¦ã„るが、戦前はもっとも恐れている国がæ-¥æœ¬ã ã£ãŸã€ã¨ã„うのも面白い。

物足りないのはアボリジニについての記述がほとã‚"どないã"と。かれらは長く「国æ°'」ã!§ã¯ãªãã€äººå£ã®ã†ã¡ã«æ•°ãˆã‚‰ã‚Œã¦ã„なかった。「å'Œè§£ã€ã®é¡›æœ«ã‚‚知りたい。

外交史から見たオーストラリア史の概説 ★★★☆☆
オーストラリアのæ­'史ã‚'、特にå¤-交史ã‚'中心に、「多æ-‡åŒ-ミドルãƒ'ワー」とã-て位置づã'たものである。「多æ-‡åŒ-ミドルãƒ'ワー」というのがå¤-交姿勢において、大国では出来ない独自の役割ã‚'、1970å¹'代以降採ç"¨ã•ã‚ŒãŸå¤šæ-‡åŒ-主義にともなうアジア・太平æ'‹åœ°åŸŸã¨ã®å¯†æŽ¥ãªé-¢ä¿‚から、その地域において、大国、特にアメリカでは出来ない「小回りのきいた」å¤-交ã‚'、カンボジアå'Œå¹³ãªã©ã‚„、東ティモールへの積極介å...¥ç­‰ã‚'例とã-て、展é-‹ã™ã‚‹äº‹ãŒãã‚Œã§ã‚る。ã"の点は、è'-è€...の専é-€åˆ†é‡Žã§ã‚り、本書においてå...‰å½©ã‚'はなっている箇所である。ã-かã-、オーストラリアの、特に戦前のæ­'史となると、教ç§'書的で、独自の分析はないように思われる。もっとも、オーストラリアのæ­'史のある程度の概観ã‚'行うという本書の要請もあるのã!§ã‚るが。いずれにせよ。「多æ-‡åŒ-ミドルãƒ'ワー」というオーストラリアの位置づã'は非常に興å'³æ·±ã„物である。