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ローマ建国史〈上〉 (岩波文庫)

価格: ¥987
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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じつに中途半端な最高の名訳ローマ史! ★★★★☆
「ローマは一日にしてならず」という言葉はどこかで聞いていましたが、これがどんな文脈で誰が云ったものか知りません。しかし、この素晴らしい歴史書を読めば、なるほどうまくローマの成立過程を言い表している言葉なのだとうなずけるはずです。

著者のリーウィウスは実際にローマ時代の全盛期に生きていた人でした。
彼は自分の生きる国家の成立の最初期を、ちまたの伝説を整理しなおし呼び起こし、信憑性のある物語として書き起こしてくれます。

第1巻はオオカミに育てられたロムルス・レムス兄弟の建国伝説から、七代続いた王政期を解説します。一代ごとの王たちの業績だけでなく、各王の市民との距離感や政治観とでもいえる個性が感じられ、単なる歴代王誌ではありません。
第2巻はブルートゥスらによる共和政の開始以降、周辺諸民族との抗争や共和国内の貴族と平民との間の権利闘争が、繰り返し記述されます。
「内憂外患」とはまさにローマにおいて日常茶飯事でした。
また、悲劇的自死をとげたルクレーティアや亡命者コリオラーヌスなど、西洋芸術史上、見過ごせない登場人物の挿話を知ることができ、戦争ばかりではない古代ローマ世界の広がりをイメージすることができる内容です。

とにかく堅苦しさがなく、すんなりとした物語として読めるため、ローマ史の基礎を知るには最高に適したテキストであるとともに、必読書だと言えるでしょう。

これは古代ローマ人が書いたローマ人の物語です。むやみに学者ぶってイタリアの知識をひけらかしたような研究書だとか、イタリア好きの日本人に向けてベストセラーを狙ったような連載ではないようです。

訳文の素晴らしく個性的な鈴木氏はこれを完訳しなかったようですが、上巻の本書だけ刊行しておいて残る中・下巻をいまだ世に出さない岩波文庫には責任感が感じられず、かなり失望してしまいいます…かなり面白い訳文だし、巻末訳注の親切心は並たいていの訳者ではないと思います。
巻末に「読書子に寄す」を標榜する岩波文庫様におかれましては、せめて他の訳者に引き継ぐなど読者に対する出版社の誠意を見せていただきたいものです。
失われたリーウィウスの書物を復元せよとはいいませんが、現存する部分を岩波訳として責任を持って世に出していただきたいです。中途半端に訳出されたリーウィウスや続巻を探し回る読者は、がっかりしていることでしょう。

京都大学学術出版会の【西洋古典叢書】は、この書物の完訳を目指しているようなので、興味がある方はチェックしてみてください。




躍動する訳注が実に楽しいだけに。 ★★★★★
 リーウィウスの名前は塩野七生の「ローマ人の物語」でしばしば目にしてきたことより一度読みたいと思っていた。一度は 古本のペーパーバッグを見つけて買ってもみたが さすがになかなか読めない。そんな中で本書を見つけてすぐに購入した。以下三点が感想である。

 一点目。2000年の人が書いた歴史書であるわけだが 面白く読める。叙述は簡潔であり非常に科学的な印象を受ける。彫りが深い書き方なので ここぞという場面ではくっきりとした情景が立ち上る。なるほど 塩野七生が絶賛するわけだと十分納得した。

 二点目。訳者の鈴木一州の「思い」が 訳注に溢れている。ローマのアジール(避難所)を
リーウィウスが書く場面では 訳注で日本の東慶寺を上げるなどと 自由闊達な精神が楽しい。また 戦争に関する訳注では核戦争と決別できない現代の人類への溜息を書いている。ここまで訳者が 自分の思いを書いている訳注はあまり見たことがなく これだけ読んでいても興味深い。

 そして三点目。訳者はこの訳を完成することなく 亡くなってしまった。リーウィウスの本書の続きが読めないという悔しさはあるが それ以上に訳者の訳注が読めなくなった点がまことに辛い。リーウィウスを訳す人はいずれ出てくると思うが 鈴木一州の訳注は 彼にしか書けないからだ。
とても面白い初期ローマ史 ★★★★☆
リーウィウスの原著は大半が散逸しているということで、現存部分だけの訳出で
上中下3冊になるという。この上巻を読む限り、これはまことに残念な話である。
なぜならあまり実証的ではないそうだが、読み物としては無類におもしろいからだ。
この上巻も一気呵成だった。この時代のローマには、日本人にとってあまりなじみ
のある有名人はいないが、周辺の諸部族との抗争やローマ内部での階層間の政治的
闘争などの波乱にみちた初期史が、やや恣意的な筆も交えて生き生きと描かれている。
ロムルス、レムス兄弟で有名な建国神話、サビーニーの略奪(お姫様ダッコの起源)、
ルクレーティアの陵辱、コリオラーヌスの話、クレメラ河畔の戦い、ローマの諸制度
の由来など大いに読ませる。後生のヨーロッパ人はこういった書物でローマを知った
のであろうか。他の芸術ジャンルへの影響も大きいようだ。モムゼンの「ローマの
歴史1」の少々お堅い記述と併せて読めば、いっそう深い理解にみちびかれると思う。
好著といえる。
今年の一月にお亡くなりになったそうで・・・合掌 ★★★☆☆
全三巻とのことなのだが、はたして全部おさまるのか?と思っていたら、岩波のサイトに「本
書はその現存部分の第1〜5巻にあたる」と書いてあったので全訳にはならないらしい。「吾妻
鏡」も途中までだったのだが、タイトル変えるなり、中巻の(1)(2)(3)・・・といった感じで、
出来れば全訳してほしい。
あと、コンスルが執政官でなく執政委員、ディクタトルが独裁官でなく独裁委員という訳語に
なっているが、これって最近の流れ?上巻には訳者解説がないので下巻とかで方針がわかるの
だろうか?
全体として、訳文は読みにくくなかったし文庫化してくれたという点を評価して★4つなのだ
が、全巻訳でないという点で減点し★3つ。