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街道をゆく〈35〉オランダ紀行 (朝日文芸文庫)

価格: ¥630
カテゴリ: 文庫
ブランド: 朝日新聞社
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オランダへの興味関心をかき立ててくれる良書。 ★★★★☆
オランダは司馬氏にとって特別な思いがある。
彼が自分の小説なおもな舞台にしてきた江戸時代から幕末にかけて、
鎖国していた徳川幕府が唯一、長崎の出島を通して海外に開いていた窓が
オランダへ向けてのものだった。

さらにこの国が造った船を幕府は買い上げ咸臨丸と名づけ
勝海舟らを乗せて海外に渡った。

だからオランダを訪れた司馬氏の心境も晴れやかで、
筆致は明るく、幸福感に包まれている。

日本文学大賞を受賞した『南蛮への道』でもそうなのだが、
司馬氏の紀行エッセイは、
一種不思議な趣がある。

『南蛮への道』では、いくつかの歴史的事実を調べながら、
最初は歴史小説家らしく実証的な裏付けを求めるが、
最後には「そんなことはどうでもいい」と叫ぶように書き、
空想力を奔走させる。

『オランダ紀行』では、巻末にかけての11章をかけて、
ゴッホゆかりのニューネン村へ向かうのだが、
たどり着くと、そこでの印象記はほとんどなく、
ゴッホについての文章も急に減少して、
日本史からの記述となる。

これはまるで彼の初期忍豪小説で、クライマックスになると、
それを打ち消すような展開を迎えていたことを思い出させる。

ともあれ、オランダの光というのは特別らしく、
それをテーマにしたドキュメンタリ映画も作られたくらいで、
この本から受ける印象は、それに似た明るさにつつまれている。


キリスト教を背景に日蘭の歴史と蘭の天才画家達等が深く考察されています ★★★★★
仕事でオランダを訪れる度に、この国の頽廃感を感ぜずにはいられませんでしたが、鎖国中に日本と縁が深かったこの国のことをもっと知りたくて、本書を購入してみました。

まず最初に驚いたのが、司馬遼太郎氏の博識でした。ヨーロッパ社会のベースであるキリスト教(カトリック、プロテスタント、関係の深いユダヤ教)を切り口に、日本が鎖国中もオランダを受け入れた理由や江戸時代の識者達とオランダの関係、また天才画家達(ルーベンス、レンブラント、ゴッホ)の絵画表現のあり方とその時代のオランダを中心としたヨーロッパ諸国・パトロン・宗教との関係が多数の書籍や有識者のコメントを基に深く考察・説明されており、非常に感銘を受けました。

特に弟のテオとの書簡の訳書等を恐らく全て読破し、オランダのゴッホ美術館等でその絵を実際に目にした上で、ゴッホに対して、死後に評価されたことや自身の行い(画業)に絶対的な自信を持っていたこと等からイエスとの類似性を見出したところや、近代絵画の象徴的な祖であるセザンヌとゴッホにおいて、ゴッホには流派が存在せず、彼のような絵画には個人の精神史が付属せざるをえず、彼の場合にかぎって、絵と文学は不離と言わざるを得ないと評したところには、その非凡なる氏の感性に圧倒されました。

江戸時代前後のヨーロッパ(オランダ)史やオランダと日本の関係、上述の天才画家について深く考察されているので、それらに興味を持たれた方にはご一読をお薦め致します。
面白くて歴史の勉強にもなる ★★★★☆
 司馬遼太郎の『街道をゆく』シリーズを初めて読んだ。随筆として書かれた本シリーズは、多少とりとめない印象を受けるが、丁寧に読むと上質のヨーロッパ文明論であることがわかる。数多くの歴史小説を書いた著者だけあって、歴史上の知識の豊富さは驚くほどだ。著者の歴史小説は、ほとんど日本か中国が舞台だが、ヨーロッパの歴史についても大変くわしく、司馬史観と呼ばれる文明観に基づいて、単なる教科書的な知識ではない本質的な理解に達しているということを改めて感じた。例えば、同じヨーロッパの中でも、フランスのように料理文化が発達している国と、イギリスのようにそれほど美食を追求しない国があるのが不思議だったが、なるほど、その違いは彼らの宗教観の違いからきていること、また17世紀オランダを代表する画家レンブラントの絵が非常に写実的なのは、当時のオランダ社会の主流を占めていた商人の考えかたからきていること、そして同時代の画家ルーベンスが、まったく違った作風の絵を描いたことを、カトリックとプロテスタントの違いから説明していること等への著者の説明に納得できた。そして、商人の国だった17世紀のオランダこそが、現代に通じる資本主義的考え方そして株式会社等の組織の起源だったことを理解することができた。歴史を振り返れば、オランダは江戸時代に外交関係を持っていた唯一のヨーロッパの国であり、我々日本人に大きな影響を与えた存在だったことを改めて思い出させてくれた。
小さな大国の魅力を探る ★★★★★
日本が鎖国して時代にも通商が認められた元祖商人資本主義の国オランダ、英仏西独と次々に戦争を仕掛けられても、レイシズムに陥らなかった、そんな偉大なる小国主義を著者が旅行し、その魅力を生き生きと描いています。オランダを旅行する前に必読書でしょう。それに、あんな小さな国なのにどうしてサッカーが強いのかというのも頷けるような気がします。
読みやすく内容が濃い本 ★★★★☆
オランダの歴史やオランダ人気質についてうまくまとめてあります。司馬遼太郎の本をうまくまとまってるなんて、私が誉めるのもおかしいのですが(笑)。とても読みやすくて、内容も正確です。オランダ人って「オランダ語」に固執してないんですよね。だから、オランダでは英語がかなり通じるし。オランダって超先進国?考え方が進んでますよね。時には理解できないくらいに・・・。自己責任の国なのでしょうか?でも、人間そんなに強くないからある程度法律で規制されないと秩序がなくなるんじゃないかと私は思うのですが。オランダに行く予定のある人、オランダ人の友達がいる人は読んでみてください。