分かりやすい入門書
★★★★☆
離散数学の分かりやすい入門書です。集合、論理、関係、写像、代数系、順序集合、束、グラフといった概念が扱われています。あまり正確でない部分やあまり厳密でない部分も見られるようですが、読者に対する配慮によるものでしょう。
ただ、証明の省略が多いように思います。きちんと証明しようとすると難しいから書いていないのか、と思いきや、そんなに難しくないところが省略されていたりします(群における単位元の唯一性の証明など)。スッキリしなくなる読者が多いのではないかと思うので、もう少し省略せずに書いてほしかったと思います。
あと、謎のキャラクターがよく出てきますが、可愛い顔して「(D6;∨,∧)は本質的にはA={a,b}の部分集合全体P(A)のブール代数(P(A);∪,∩)と同じね。」などと言ってるところが萌えるポイントだったりします。
プロの人が初学者に教えるときにお薦めしたい本
★★★☆☆
離散数学は判っている人が判っていない人に講義をするとき,なかなか手強い教科ではないか,と思う.
なぜならば,「考える方法について教授する」ことが求められる教科であって,一方で,「考える方法を講義する」ことは難しいためである.
本書には,いくつかの表記が各分野の標準にそっていなかったり,間違っている定義が書かれているところがある.
そのため本書で初学者が自習することは危険であるといえるだろう.
例えば,数理論理学の論理式の表現と値は分離するべきである(もっとも,これは習得することが難しい概念の一つであるから,そこを配慮しているともいえる)と思うし,関係の合成の定義は間違っている.
したがって,このテキストは,既に判っている人が,判っていない人に講義するとき,判っていない人がどういうところでつまづくのかを具体的に教えてくれているという認識で読むべきである.
このような意味で,その分野のプロが,離散数学をどのように教えるべきか,ということを示すガイドラインとして本書を推したい.